任意後見制度の手続きと費用【法定後見との違いも行政書士が解説】

「もし認知症になったら、誰に財産を管理してもらえばいいのか」——この不安を解消するために設けられた制度が任意後見制度です。自分が元気なうちに信頼できる人を後見人として選び、判断能力が低下したときに備えることができます。

本記事では、任意後見制度の仕組み・法定後見との違い・公証役場での手続きの流れ・費用相場を、行政書士が詳しく解説します。

📌 この記事が役立つ方
  • まだ元気なうちに将来の財産管理を準備しておきたい方
  • 認知症になったとき誰に任せるか悩んでいる方
  • 親に任意後見を勧めたいが何から始めればよいか知りたい子世代
📋 この記事でわかること
  • 任意後見は判断能力があるうちに「将来の後見人」を自分で選べる制度
  • 公証役場での公正証書作成が必須(任意後見法第3条)
  • 発効は「家庭裁判所が監督人を選任した時点」—自動的には始まらない
目次

任意後見制度とは

任意後見制度は、本人が判断能力の十分なうちに、将来に備えて「財産管理・生活支援をしてもらう人(任意後見受任者)」を自分で選び、契約を結んでおく制度です(任意後見契約に関する法律)。認知症などで判断能力が低下した後に後見人を家庭裁判所が決める「法定後見」とは根本的に異なります。

法定後見との比較表

2つの制度の主な違いを整理します。

  • 後見人の選び方:任意後見=自分で選ぶ / 法定後見=家庭裁判所が選任
  • 契約時期:任意後見=判断能力があるうち / 法定後見=判断能力低下後
  • 内容の自由度:任意後見=比較的広い / 法定後見=類型によって制限
  • 活用シーン:任意後見=予防的・事前設計 / 法定後見=緊急対応
✅ ポイント
任意後見の最大のメリットは「信頼できる人を自分で選べる」点です。専門家(弁護士・行政書士・司法書士)に限らず、家族・友人・NPOなど誰でも後見人になれます(法人も可)。

任意後見契約の手続きの流れ

任意後見は法律で公正証書による作成が義務付けられています。以下の4ステップで進みます。

STEP1:後見人の候補者を決める

財産管理・日常生活の支援(病院の同行・施設入所の手続き補助など)を誠実に行える人を選びます。候補者には事前に詳細な意向を伝え、引き受けてもらえるか確認が必要です。

STEP2:公証役場で公正証書を作成する

公証役場で本人・後見人候補・公証人が立ち会い、契約内容(後見人の権限範囲・報酬など)を確定させます。契約書は公証人が作成し、法務局に後見登記されます。

ℹ️ 権限の設定は具体的に
「財産管理全般」だけでなく、「不動産の処分には本人または監督人の同意を要する」「医療に関する説明の受領は含むが同意権は除く」など、権限の範囲と制限を具体的に定めておくことが重要です。

STEP3:任意後見監督人選任の申立て(発効時)

本人の判断能力が低下した際、本人・配偶者・四親等内の親族または任意後見受任者が、家庭裁判所に「任意後見監督人の選任申立て」を行います。この申立てがなければ、契約があっても任意後見は発効しません。

STEP4:任意後見の開始

家庭裁判所が監督人を選任した時点から「任意後見人」として活動が始まります。定期報告・財産管理記録の作成などが義務となります。

任意後見の費用相場

費用は「契約時」と「後見開始後の継続費用」に分かれます。

契約時の費用

  • 公正証書作成手数料:11,000円(財産額1,000万円以下・基本額)
  • 登記嘱託手数料:1,400円
  • 正本・謄本費用:250円×枚数
  • 行政書士・司法書士の相談・書類作成費用:3〜10万円程度

後見開始後の継続費用

  • 任意後見人への報酬:家族なら無報酬〜月1〜3万円程度。専門家なら月3〜5万円以上
  • 任意後見監督人への報酬:家庭裁判所が決定。月1〜3万円程度
⚠️ 注意
専門家を後見人に選ぶと年間40〜80万円以上の費用がかかる場合があります。費用負担と財産規模のバランスを考えた上で、後見人を誰にするか検討してください。

任意後見でできないこと

任意後見には重要な「できないこと」があります。事前に理解しておくことが大切です。

  • 医療行為への同意:手術の同意書へのサインなど、医療行為の「同意」は任意後見人の権限外
  • 身分行為の代理:婚姻・離婚・養子縁組などを本人に代わって行うことは不可
  • 任意後見人自身の利益相反行為:後見人が本人の不動産を買い取るなど

よくある質問(FAQ)

Q. 認知症になってからでも任意後見の契約はできますか?
A. できません。任意後見契約は「判断能力が十分な状態」で締結することが条件です。判断能力が低下した後は法定後見(後見・保佐・補助)を利用する必要があります。
Q. 任意後見契約を結んだ後で解除できますか?
A. 任意後見が始まる前(監督人選任前)であれば、本人または受任者の意思で解除・変更できます。後見が始まった後は、正当な理由がある場合に家庭裁判所の許可を得て解除できます。
Q. 「見守り契約」と組み合わせることはできますか?
A. できます。任意後見が発効するまでの間、後見人候補者が定期的に連絡・訪問する「見守り契約」を併用するのが一般的です。任意後見のみでは発効前の空白期間ができるため、見守り契約との組み合わせを推奨します。

自分でできること・専門家に頼む場面

✅ 自分でできること
  • 家族・信頼できる人を後見候補として話し合う
  • 公証役場への事前相談(無料相談可)
👨‍💼 専門家に頼む場面
  • 公正証書の作成(公証人)
  • 契約書の内容設計・書類作成(行政書士・司法書士)
  • 後見人として活動する専門家(弁護士・司法書士等)

費用の目安

項目 費用目安
公証役場の公正証書手数料1.1万円〜(財産額による)
行政書士・司法書士の相談・書類作成3〜10万円程度
任意後見人への月額報酬(家族の場合)無報酬〜3万円程度
任意後見人への月額報酬(専門家の場合)月3〜5万円以上

今すぐできる3つのアクション

  • ①家族と「将来誰に任せるか」を話し合う
  • ②公証役場または行政書士に相談(判断能力がある今が最適)
  • ③公正証書作成→見守り契約と一緒に整備する

まとめ

任意後見制度は「自分の意思を未来に届ける」ための有効なツールです。しかし契約内容が不十分だと、いざというときに機能しないリスクもあります。

  • 判断能力があるうちに公証役場で公正証書を作成する
  • 発効には家庭裁判所への監督人選任申立てが必要
  • 医療同意は任意後見人の権限外
  • 費用は契約時1〜15万円+後見開始後は月2〜8万円程度
  • 見守り契約との組み合わせで空白期間を補う

任意後見の設計は専門家への相談を強くお勧めします。行政書士・司法書士・弁護士が対応しており、初回相談無料の事務所も多くあります。

【免責事項】本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の法的アドバイスではありません。具体的な判断は行政書士・弁護士・税理士等の専門家にご相談ください。記載内容は2026年3月時点の情報です。
監修・執筆:井上剛志(行政書士・終活カウンセラー上級)
相続・遺言・成年後見を専門とする行政書士。終活に悩む方の相談を年間200件以上受ける。本記事は2026年3月時点の法令に基づき作成。
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この記事を書いた人

終活カウンセラー認定資格保持者の30代女性。両親の介護や相続問題を経験したことをきっかけに、終活の重要性を実感。「もっと早く知っておけばよかった」という後悔から、同じ悩みを持つ方々の力になりたいと思い、終活に関する情報を発信しています。

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