相続財産の調査方法【預貯金・不動産・株式の調べ方を行政書士が解説】

親が亡くなった後、「どこにどんな財産があるのか」を把握することが相続手続きの第一歩です。財産の調査漏れがあると、相続税の過少申告や遺産分割のやり直しが必要になる可能性があります。

本記事では、行政書士・宅地建物取引士の資格を持つ井上が、預貯金・不動産・有価証券・保険・負債それぞれの調査方法を整理して解説します。2026年3月時点の情報です。

📋 この記事でわかること
  • 財産調査は「預貯金・不動産・有価証券・生命保険・負債」の5カテゴリで進める
  • 金融機関への残高照会は死亡を証明する書類があれば依頼できる
  • 不動産は登記情報提供サービス、株式は「ほふり」の開示請求で調べられる
目次

相続財産の調査が重要な理由

遺産分割協議は「全財産の把握」が前提です。後から新たな財産や負債が発覚すると、協議のやり直しが必要になるケースがあります。また、相続税の申告後に申告漏れが発覚すると、修正申告と追徴課税が生じる可能性があります。

特に負債(借入金・保証債務)の見落としは深刻です。負債が財産を上回る場合、家庭裁判所への相続放棄の申述は「相続の開始があったことを知ったときから3ヶ月以内」が期限です。財産と負債の両方を早期に把握することが、この期限を守るうえでも重要になります。

調査の進め方:5カテゴリ別

①預貯金・現金

通帳・キャッシュカード・銀行の郵便物から口座を特定します。通帳が見当たらない場合は、各金融機関に「名義人照会(残高照会)」を依頼できます。依頼時には、被相続人の死亡を確認できる書類(除籍謄本など)と、依頼者が相続人であることを証明する書類が必要です。

ゆうちょ銀行には貯金照会の専用窓口があります。複数金融機関の口座を調べる場合は、金融機関ごとに個別に照会する必要があります。

②不動産

不動産の有無は「固定資産税の納税通知書(毎年4〜6月頃に届く)」または登記事項証明書で確認できます。インターネットで登記情報を確認したい場合は、登記情報提供サービス(法務省関連)を利用する方法があります(閲覧のみ・有料)。市区町村の固定資産税課では「名寄帳(なよせちょう)の写し」を取得することで、その自治体内のすべての不動産を一覧確認できます。複数の市区町村に不動産がある場合は、各自治体への個別確認が必要です。

③有価証券(株式・投資信託・国債など)

証券会社からの郵便物・取引報告書から口座を特定します。取引口座が不明な場合、証券保管振替機構(ほふり)の「登録済加入者情報の開示請求」を利用することで、被相続人が保有していた口座を調べられます。手続きには所定の手数料がかかります。

④生命保険・損害保険

保険証券・生命保険会社からの郵便物から特定します。生命保険契約者協会の「生命保険契約照会制度」を利用すると、遺族が各生命保険会社に一括照会できます(1件あたり3,000円の手数料)。

⑤負債(借入金・保証債務)

負債の調査も財産調査と同様に重要です。銀行・消費者金融・クレジット会社からの郵便物を確認するほか、信用情報機関への照会で借入れの記録を確認できます。主な照会先は以下のとおりです。

各機関への照会は相続人本人が手続きを行う必要があります。照会方法の詳細は各機関の公式サイトでご確認ください。

調査で発見すべきその他の財産

  • ゴルフ会員権・リゾート会員権(証書を確認)
  • 未払いの給与・退職金・年金(雇用先・年金事務所へ確認)
  • 貸付金・売掛金(メモ・契約書を確認)
  • 仮想通貨・デジタル資産(パスワード管理ノート・スマホアプリを確認。取引所のメール履歴も手がかりになります)
  • 海外資産(外国の不動産・口座)

よくある質問(FAQ)

Q1. 調査に期限はありますか?

財産調査自体に法定期限はありません。ただし、相続放棄の検討は「相続の開始があったことを知ったときから3ヶ月以内」(家庭裁判所への申述が必要)、相続税申告は10ヶ月以内の期限があります。特に負債の調査は早急に着手することをおすすめします。

Q2. 負債が財産より多い場合はどうなりますか?

相続放棄または限定承認を検討できます。相続放棄の申述は「相続の開始があったことを知ったときから3ヶ月以内」が期限です。財産・負債の全体が把握できてから判断する必要があるため、調査は最優先でおこなってください。3ヶ月以内に判断が難しい場合は、家庭裁判所に期間伸長の申立てができます。

Q3. 調査を専門家に依頼できますか?

行政書士・司法書士・弁護士に依頼できます。金融機関の照会・戸籍収集などの書類収集を代行してもらえます。費用の目安は案件の複雑さによって異なるため、複数の事務所への相談を検討してください。

Q4. 5つのカテゴリ、どこから調査を始めればいいですか?

負債の調査を最初に進めることを推奨します。負債が財産を上回る場合、相続放棄の期限(3ヶ月以内)があるためです。並行して預貯金の口座特定も早めに着手しましょう。不動産・有価証券・保険は書類が手元にそろってから進めても間に合うケースがほとんどです。

まとめ

  • 財産調査は「預貯金・不動産・有価証券・保険・負債」の5カテゴリで進める
  • 不明な金融機関の口座は「名義人照会」で確認できる
  • 株式は「ほふり」、生命保険は「生命保険契約者協会の照会制度」が便利
  • 負債調査は信用情報機関(CIC・JICC・全銀協)への照会も有効
  • 相続放棄の期限は「相続の開始があったことを知ったときから3ヶ月以内」。負債が多い場合は最優先で動く

参考資料・一次ソース

免責事項:本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の法的助言を行うものではありません。具体的な手続きや判断については、弁護士・行政書士・司法書士等の専門家にご相談ください。掲載情報は2026年3月時点のものであり、法改正等により変更となる場合があります。

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監修・執筆:井上剛志
行政書士/終活カウンセラー上級/成年後見制度アドバイザー/宅地建物取引士
相続・不動産・終活分野の手続きを専門とする行政書士。おくりびとジャーナルにて制度・法律・費用に関する記事を執筆。

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    この記事を書いた人

    井上剛志のアバター 井上剛志 行政書士・終活カウンセラー上級

    行政書士として相続・遺言・成年後見などの実務に従事し、終活分野の相談を多数対応。終活カウンセラー上級、成年後見制度アドバイザー、宅地建物取引士の資格を活かし、法的リスクへの備えや不動産整理まで総合的にカバーしています。親の介護と相続を経験したことから、実務知識と当事者視点をあわせた情報提供を重視。読者にとって「すぐに使える終活知識」をモットーに、わかりやすく丁寧な解説を行います。

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