「遺言書を書いておきたいけど、書き方を間違えて無効になったら困る」——そう心配する方は多いでしょう。自筆証書遺言は、法律で定めた最低条件さえ満たせば自分で作成でき、公正証書遺言に比べて費用もかかりません。
この記事では、自筆証書遺言の要件(全文自書・日付・氏名・押印)、基本テンプレート、よくある無効パターン、法務局保管制度の使い方を解説します。書き始める前にこの記事で確認してください。
- 自筆証書遺言は「全文・日付・氏名を自書し実印を押す」ことが最低条件(民法第968条)
- 財産目録はパソコン作成も可能になった(2019年7月施行の改正民法)
- 書いたら法務局の「遺言書保管制度」を利用すると紛失・隠蔽・検認が不要になる
遺言書の種類と自筆証書遺言の特徴
遺言書には主に「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」の2種類があります。自筆証書遺言は費用なし・自分一人で作成できる手軽さが特徴です。一方、公正証書遺言は公証人が関与するため費用(数万円〜)がかかりますが、法的効力が確実で検認も不要です。
自筆証書遺言の作成要件(民法第968条)
- 全文を自書すること(財産目録を除く)
- 日付を記載すること(「令和○年○月○日」と特定できる形で)
- 氏名を自書すること
- 押印すること(認印でも有効だが、実印が望ましい)
2019年7月施行の改正民法により、財産目録はパソコンでの作成・コピー添付も認められるようになりました。ただし、財産目録の各ページに署名・押印が必要です。
自筆証書遺言の書き方(基本テンプレート)
①遺言書の書き出し
用紙の一番上に「遺言書」と書きます。A4のコピー用紙で問題ありません。
②財産の内容と誰に渡すかを明記する
「私は、下記の財産を(相続人の氏名)に相続させる。」の形式で記載します。不動産は「所在・地番・地目・地積(土地)」または「所在・家屋番号・種類・構造・床面積(建物)」を登記事項証明書の記載通りに記入します。預貯金は「金融機関名・支店名・口座番号」を記載します。
③付言事項(任意)
財産の分配理由や家族へのメッセージを「付言事項」として添えることができます。法的効力はありませんが、相続人間のトラブルを防ぐ効果があるとされています。
④日付と署名・押印
「令和○年○月○日」と具体的な日付を書き、その下に氏名を自署して押印します。「令和○年○月吉日」等は日付が特定できないため無効とされています(最高裁判例)。
よくある無効パターン
- パソコンで全文を作成した(財産目録以外は自書が必須)
- 日付が「令和○年○月吉日」等、特定できない形式
- 署名・押印がない
- 鉛筆で書いた(後から改ざんの可能性があるとみなされる可能性がある)
- 財産の特定が不十分(「全財産」だけでは不十分なケースがある)
法務局の遺言書保管制度の活用
2020年7月から始まった「法務局における遺言書の保管等に関する法律」に基づく制度で、法務局に遺言書を預けることができます(手数料:3,900円)。この制度を利用すると、家庭裁判所での「検認」手続きが不要になります。また、紛失・隠蔽・改ざんのリスクも避けられます。
よくある質問
Q. 遺言書は何歳から作れますか?
15歳以上であれば遺言書を作成できます(民法第961条)。認知症等で判断能力が低下してからの作成は後で争いになる可能性があるため、元気なうちの作成を検討することをおすすめします。
Q. 遺言書があっても相続人に遺留分はありますか?
あります。配偶者・子・父母には「遺留分」(法定相続分の1/2または1/3)が認められています(民法第1042条)。遺言書で遺留分を下回る配分をすると、遺留分侵害額請求の対象になる可能性があります。
Q. 一度書いた遺言書は変更できますか?
できます。遺言書はいつでも撤回・変更が可能です(民法第1022条)。日付が新しい遺言書が優先されるため、内容を変えたい場合は新しい遺言書を作成してください。
まとめ
- 自筆証書遺言は「全文・日付・氏名を自書+押印」が最低条件(民法第968条)
- 財産目録のみパソコン作成可(各ページに署名・押印が必要)
- 「令和○年○月吉日」は無効。日付は必ず特定できる形で書く
- 法務局の遺言書保管制度(3,900円)を使うと検認不要で安心
参考資料・一次ソース
行政書士/終活カウンセラー上級/成年後見制度アドバイザー/宅地建物取引士
相続・不動産・終活分野の手続きを専門とする行政書士。おくりびとジャーナルにて制度・法律・費用に関する記事を執筆。
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