相続税の申告を済ませたあと、税務署から「調査にうかがいたい」という連絡が来ることがあります。相続税の税務調査は申告した案件の約10件に1件の割合で行われており、調査が入ると86%以上で申告漏れが発覚しています(国税庁・令和4事務年度)。
本記事では、税務調査の対象になりやすいケース・よく指摘される項目・事前にできる対策を、わかりやすく解説します。申告前に必ず確認してください。
- 相続税を申告済みで調査が来ないか不安な方
- 申告前に指摘されやすい項目を把握したい方
- 名義預金・生前贈与が多くある方
- 相続税の実地調査率は約10%。対象になると86%以上で追徴課税が発生
- 名義預金・生前贈与の加算漏れ・不動産評価誤りが主な指摘項目
- 正確な申告と記録の整備が最善の対策。税理士依頼で調査率が下がる傾向
相続税の税務調査とは
税務調査とは、税務署(国税局・税務署)が提出された申告書の内容を検証するために行う調査です。書面照会(書類を郵送で確認)と実地調査(調査官が自宅に来る)の2種類があります。
実地調査の実施状況(国税庁データ)
国税庁「令和4事務年度における相続税の調査等の状況」によると、相続税の実地調査件数は8,196件で、そのうち7,036件(85.8%)で申告漏れ等が発覚。追徴税額の平均は1件あたり約672万円でした。
「申告したから安心」は危険です。調査が入れば9件中8件以上で何らかの問題が見つかっています。申告後に指摘を受けないためには、申告前の精度が重要です。
調査対象になりやすいケース
税務署はすべての申告書を精査しており、疑問がある案件を調査対象として選定します。以下のような案件は選ばれやすいとされています。
- 申告財産の総額が1億円以上
- 被相続人の収入・職業と財産額の乖離が大きい
- 相続開始前3〜7年以内に大きな出金・贈与の記録がある
- 相続税がゼロ(基礎控除以下)で申告なしの案件
- 不動産の評価が著しく低い
税務署は金融機関への照会権限を持っており、被相続人・相続人の過去7〜10年分の口座記録を確認できます。また不動産登記情報・株式の配当記録・法人税申告書なども参照しています。「税務署は何も知らない」という考えは禁物です。
よく指摘される5大項目
①名義預金
最も多い指摘が名義預金です。子や孫の名義で預金していても、通帳・印鑑の管理者が被相続人だった場合は「実態は被相続人の財産」として相続財産に算入されます。「毎年子どもの口座に振り込んでいた」だけでは贈与として認められないケースがあります。
②生前贈与の加算漏れ
相続開始前3年以内(2024年以降の贈与から段階的に7年以内へ延長)の贈与は相続財産に加算する義務があります。贈与税の申告をしていても相続財産への加算は別途必要で、この見落としは非常に多いです。
③不動産評価の誤り
路線価方式・倍率方式の計算ミスや、小規模宅地等の特例の適用要件を誤って解釈した結果、評価額が大きく下がっているケースが指摘されます。
④生命保険・金融資産の申告漏れ
証券口座の残高・個人年金保険・積立保険など、被相続人が保有していたことを相続人が把握していなかった金融資産の申告漏れが多いです。
⑤海外資産の未申告
海外口座・外国株・海外不動産など、近年税務署が力を入れているのが海外資産の把握です。国際的な税務情報共有(CRS)により、海外口座情報が日本税務当局に報告される仕組みが整っています。
税務調査が来たときの流れ
実際に税務調査の連絡が来た場合の対応を確認しておきましょう。
- 電話による日程調整:申告期限から1〜2年後に連絡が来る。日程は相談可能
- 当日の立ち会い:税理士に依頼中であれば税理士が窓口になる
- 通帳・契約書などの確認:準備しておくと調査がスムーズ
- 指摘事項の確認:後日書面で送られてくる
- 修正申告または異議申立て:指摘内容を確認し対応を判断
事前にできる5つの対策
- 相続前から通帳・贈与記録・契約書を整理・保管する(10年分目安)
- 生前贈与は贈与契約書を作成し、振込で証拠を残す
- 名義預金がある場合は専門家に相談し整理しておく
- 申告は相続税に強い税理士に依頼する
- 不動産評価は複数の方法で試算し最も有利・正確な方法を選ぶ
税理士に依頼した申告書は調査対象になりにくい傾向があります。費用は発生しますが、追徴課税のリスクを考えれば費用対効果は高いといえます。
よくある質問(FAQ)
A. 全申告の約10%に調査が入ります。高額な財産や記録の不整合がなければ対象になりにくいですが、「来ない保証」はありません。
A. 調査前・調査中いつでも税理士に依頼できます。調査通知を受けた段階で速やかに税理士に相談することをお勧めします。
A. かかります。自主的に修正申告すれば加算税(原則10〜15%)は軽減される場合があります。調査で指摘を受けてから修正するより、自主申告の方が税率が低くなります。
自分でできること・専門家に頼む場面
- 過去10年分の通帳記録・贈与記録の整理
- 生前贈与の証拠書類(贈与契約書・振込明細)の確認
- 名義預金の実態整理(管理者・印鑑・入出金者を記録)
- 相続税申告書の作成(相続税専門の税理士)
- 申告後の税務調査への対応(税理士)
- 修正申告の判断・提出(税理士)
費用の目安
| 項目 | 費用目安 |
|---|---|
| 税理士への申告依頼 | 遺産総額の0.5〜1%が目安(最低30万円〜) |
| 修正申告の加算税(自主申告) | 10〜15%(本税に対して) |
| 修正申告の加算税(調査後) | 10〜35%(過少申告・無申告で異なる) |
今すぐできる3つのアクション
- ①相続前から通帳・贈与記録を整理・保管する
- ②申告は相続税専門の税理士に依頼する
- ③指摘を受けた場合は自主的な修正申告で加算税を抑える
まとめ
相続税の税務調査は「申告したら終わり」ではなく、申告後1〜2年で来る可能性があります。日頃の記録整備と正確な申告が何より重要です。
- 調査率約10%、調査案件の86%で申告漏れ発覚
- 名義預金・生前贈与加算漏れ・不動産評価誤りが三大指摘
- 通帳・贈与記録は10年分保管
- 相続税申告は税理士に依頼し、記録の整備を怠らない
「申告後に指摘されるのでは」と不安な方は、まず税理士に現状確認を依頼してください。自主的な修正申告であれば加算税の軽減が期待できます。
相続・遺言・成年後見を専門とする行政書士。終活に悩む方の相談を年間200件以上受ける。本記事は2026年3月時点の法令に基づき作成。

