親にエンディングノートを渡す方法|失礼にならない声かけと最初に書いてもらう3項目

親にエンディングノートを渡す方法|おくりびとジャーナル

買ったエンディングノートを親に渡せず、袋に入れたままになっている。「元気なのに、死の準備を急かすように聞こえないかな」と迷うことがあるかもしれません。

まずはノートを渡す前に、今その話をしてよいか尋ねてみましょう。 残す内容や見せる相手は親が選び、今日は話さないという返事も受け止めます。

この記事では、渡す前の声かけ、話を断られたときの返し方、書く項目と共有範囲の相談方法を紹介します。ノートを用意した後の手伝い方まで、順に見ていきましょう。

目次

親にエンディングノートを渡すときは何から始める?

最初は「少し話してもいい?」と尋ね、その日の返答に合わせて進めます。 誕生日や帰省の予定を理由に、その日に渡すと決めておく必要はありません。

話を始めた後の進め方は、親の返答によって変わります。次の表は、家族がその場で選べる行動をまとめたものです。

親の返答 家族ができること
少し話してよい残したいことをひとつ聞く
自分で書きたい頼まれた購入や印刷を手伝う
話したいが書くのは難しい口頭で話すか、代筆を望むか尋ねる
今は話したくないその日の話を終える

今日話せるかは、今日の返事を聞いて決めます。話せそうなら次の声かけを使い、気が進まないと言われたら「親が嫌がる・書かないとき」の章へ進んでみてください。

藤原まどか
私は、ノートを受け取る返事と、今日書く返事を別々に聞く形を勧めます。「受け取るけれど、今は書かない」という返事なら、書き始める日を決めず、渡すところで終えられます。

どんな声かけで話を始めればよい?

家族が手伝いたい場面をひとつ伝え、話す時と相手を相談します。離れて暮らしているなら、郵送する前にノートを受け取りたいか尋ねてみましょう。

手伝いたい場面をひとつ伝える

「もし入院したら、私から連絡してほしい人を教えてもらえると助かるんだけど、今少し話してもいい?」と、気になっている場面から切り出す方法があります。

親が話したいと言ったら、「覚えておきたいことを、紙に残すのを手伝おうか」と声をかけてみましょう。ノートを使うか、今日は話すだけにするかを相談する場面です。

自分のノートを見せたいときは、見せるページを選んで「こういう欄を書いてみたんだけど、見てみる?」と声をかけてみましょう。自分が書いたことを、親に記入してもらう条件にはしません。

話す時と相手を親に選んでもらう

「今なら少し話せる」「今日は疲れた」といった返事を聞いてから、ノートを開きます。話の途中で休みたくなったら、書きかけのまま閉じてかまいません。

誰と話したいかも尋ねておくと、家族全員で集まるのか、一人と話すのかを選べます。親が一人で書きたいときは、ノートを渡して、手伝いが必要になったら声をかけてもらう形にしましょう。

離れて暮らすなら送る前に尋ねる

電話で「気持ちや連絡先を残せるノートを見つけたんだけど、見てみたい?」と聞き、受け取りたいと言われてから送る方法があります。

添え状には「使いたいページだけ使ってね。手伝ってほしくなったら声をかけてね」と書き添えられます。記入したページを返送してもらう約束まで、その場で求める必要はありません。

次の図は、親が話を続けたいときの流れです。話すこと、記入すること、共有することを、それぞれ相談して進めます。

親とエンディングノートの話を進める流れ 今話してよいかを尋ね、親が残したい項目を選び、見せる相手と範囲を相談し、親が望めば記録する。話したくないときや途中でやめたいときは、今日はそこで終える。 親が選べる進め方 今、話してよいか尋ねる 話す時と相手を相談 親が残したい項目を選ぶ 書きたい欄から始める 誰に何を見せるか相談 内容と相手を決める 親が望めば記録する 書き取った内容を読み返す 途中でやめたいときは 今日はここで終える
図:親と相談しながら進める流れ

まず話してよいか尋ね、次に親が残したい項目を選びます。誰にどこまで見せるかを相談した後、親が望めば記録し、途中でやめたくなったら今日はそこで終えます。

親が嫌がる・書かないときはどうする?

話題を断られたら、その日の話を終えます。ノートを使いたいけれど書くのが難しい、と相談されたときは、頼まれた範囲で手伝いましょう。

その日の話を終える

「縁起でもない」「今はそんな話をしたくない」と言われたら、「わかった。今日はやめておこう」と返して、ノートを閉じます。

断られた後に、別の言い方でその場の説得を続けなくてかまいません。 ノートを持ち帰るか、親の手元に置いておくかを尋ね、受け取りも望まないときは持ち帰りましょう。

次に話す日は、その場で決めずに終えられます。後日この話題が出たら、以前の返答を理由に話を進めず、「今日は話してもよい?」と改めて尋ねます。

頼まれた手伝いだけをする

「字を書くのが疲れる」「どの欄から書けばよいかわからない」と相談されたら、どんな手伝いを望むか聞いてみましょう。代筆や使いたいページだけの印刷、口頭で話すことなどが候補です。

代筆を頼まれたら、親が話した言葉を書き取り、最後に読み返します。まだ決まっていない希望は「未決」と残し、家族の希望で埋めないようにします。

親の終活全体をどう手伝うか迷っている方は、親の終活を支えるための記事へ進んでみてください。

最初に何を書くかはどう選ぶ?

最初に書くのは、親が残しておきたいことから選びます。 連絡先、通院の情報、大切な書類の場所は、話題を探すための三つの例です。

「この中なら、残しておきたいことはある?」と尋ねてみましょう。三つすべてを埋める前提にせず、思い出やこれからやりたいことなど、親が別の欄を選んだらそこから始めます。

連絡してほしい人を聞く

「入院したとき、私から連絡してほしい人はいる?」と、場面を決めて聞いてみます。知らせたい相手と、連絡を頼みたい家族を親が選んだら、書き留めてよい範囲を相談しましょう。

「今日は名前だけ」と言われたら、まずその名前を残します。電話番号まで家族の手元に置くかは、追加してよいか親に尋ねてから決めます。

通院先やお薬手帳の場所を聞く

家族に伝えておきたい通院先や、お薬手帳の置き場所があるかを聞きます。家族が受診の付き添いを頼まれているなら、そのとき持っていく物から話し始められます。

病歴や治療の希望をすべて書いてもらう必要はありません。医療やケアの希望について話したいと言われたら、後の「医療・財産・パスワードの希望を聞いたら?」で紹介する相談につなげます。

書類の置き場所を伝えるか相談する

保険や年金などの書類について、場所を家族に知らせたいか尋ねます。「この棚にあると覚えておいてほしい」と言われたら、誰に場所を伝えてよいかを相談しましょう。

置き場所を聞いたことと、引き出しを開けることは別の話です。書類を探したり撮影したりする手伝いが必要なら、その作業をしてよいか改めて尋ねます。

親と話す項目をまだ決められない方は、エンディングノートの項目一覧を開いてみてください。声をかけるきっかけになりそうな欄をひとつ探し、渡すときは「この欄の話をしてもいい?」と親に尋ねる形です。

書いた内容は誰にどこまで共有する?

話した内容のうち、誰に何を伝えてよいかを相談します。家族がメモを残すときは、書き取った後に親と読み返し、内容と共有先をそろえましょう。

五つの欄で相談した範囲を残す

以下は、紙へ写して使える相談メモです。各欄は、親が残したいと言ったところだけを書きます。

  • 共有してよい内容:何を伝えてよいか。
  • 伝えてよい相手:誰に伝えてよいか。
  • まだ決めないこと:未決のまま残すこと。
  • 今日はここで終える:その日、話を終えるところ。
  • 次に話せるとき:親が次の話を望むときだけ、予定を残す。

次の予定は空欄や「予定を決めない」で終えられます。相談メモを残すこと自体を望まないときは、記録せずに終えましょう。

このメモは、話し合った範囲を覚えておくためのものです。暗証番号、パスワード、口座番号は書き込まず、秘密情報を残す方法は別に相談します。

メモを親と読み返す

次は、使い方を説明するために作った仮の例です。実在する親子の体験談や、同じ声かけで受け入れてもらえる実績ではありません。

家族が「入院したとき、連絡してほしい人はいる?」と聞き、親が「友人の名前だけ、あなたに覚えておいてほしい」と答えた場面を想定しています。

  • 共有してよい内容:入院したときに連絡してほしい友人の名前。
  • 伝えてよい相手:今回は娘だけ。
  • まだ決めないこと:葬儀の希望と書類の場所。
  • 今日はここで終える:友人の名前を聞いたところ。
  • 次に話せるとき:今は予定を決めない。

書き取ったら、「この名前を私の手元に残してよい?」「ほかの家族へ伝えてよい?」と読み返します。電話番号の追加を望むかも、親の返答を聞いて決めましょう。

「娘だけ」が「息子にも伝えてよい」に変わったら、相手と変更した日を書き直します。家族が別の人へ伝えたくなったときは、このメモを見せ、共有範囲を親と話してから伝えます。

藤原まどか
ページごとに、見せる相手を親に選んでもらうのが私の勧める形です。連絡先のページと思い出のページをそれぞれ指し、「このページは誰までならよい?」と尋ねてみてください。

ノートの選び方と保管はどう決める?

親が読み書きしやすく、使ってみたい形を選びます。書いた後は、必要なときに取り出す人へ、保管場所と使ってよい場面を伝えるか相談しましょう。

親が読み書きしやすい形を選ぶ

買う前に実際のページを見て、文字の大きさ、書く欄の広さ、項目の量を親と見比べます。紙とデジタルのどちらを使いたいかは、親の希望を聞いてみてください。

選ぶときに目を向けたい点を、形ごとにまとめました。

ノートの形 選ぶときに見るところ
市販の紙ノート文字と欄の大きさ、使いたい項目があるか
自治体の公開PDF使うページを選べるか、印刷した文字が読めるか
デジタルのノート親が操作できるか、閲覧相手と保存方法を選べるか

デジタルのサービスを候補にするなら、利用料金、共有できる範囲、データの保存・書き出し方法を運営元の最新案内で読んでから選びます。ここでは特定のサービスの継続や無料利用を保証していません。

富士市の『自分を生ききるためのエンディングノート』は、書きたい欄から始め、全欄を埋める必要はないと案内しています。親に見せるときは、使いたいページだけを印刷するのがひとつの方法です。

無料で入手する方法や市役所のノートを探す記事も参考にしつつ、配布場所や印刷方法はお住まいの自治体の公式案内で読みます。候補のノートが見つかったら、文字や欄の大きさを親と見比べて選びましょう。

藤原まどか
私は、親が「このページなら使いたい」と言えることを、ノートを選ぶ基準にします。親が試してみたいと言ったら、見本の文字を読んだり、印刷した欄に書いたりして使い心地を聞いてみてください。

見てよい人へ保管場所を伝える

保管場所を知らせることと、全ページを共有することは別に相談します。 親が伝えたいページと、必要なときに取り出してよい人を決めたら、その人へ置き場所と使ってよい場面を伝えます。

写真を撮って家族へ送るなら、撮るページと送る相手を親に尋ねましょう。家族のグループへ送るときは、誰が読めるグループなのかを一緒に見てから決めます。

ノートには個人情報が含まれるため、親が使いやすく、家族以外が手に取らない保管場所を一緒に探してみてください。参考になるのが、保管場所への注意を案内した富士市の『自分を生ききるためのエンディングノート』の公式案内です。

親の希望や連絡先が変わったら、書き直した日を残します。具体的な記入と管理の方法は、エンディングノートの書き方で詳しく読めます。

医療・財産・パスワードの希望を聞いたら?

医療の希望は医療・ケアの担当者へ、財産の分け方は遺言の相談へつなげます。パスワードなどの秘密情報は、家族の相談メモと別に、保管と渡し方を相談しましょう。

医療の希望は担当者と話す

厚生労働省の「人生会議」は、本人の大切にしたいことや医療・ケアの希望を、家族や大切な人、医療・ケアチームと話し合う取組です。

親が治療や介護の希望を話したいと言ったら、かかりつけ医やケアの担当者と話す機会を探します。誰に同席してほしいかは、親に尋ねてみてください。

気持ちが変わったら話し直すことについては、厚生労働省の「人生会議とは」でも案内しています。前に書いた内容を読み返すときは、「今の気持ちはどう?」と聞いてみてください。

財産の分け方は遺言の相談へ

親が財産を誰に残すかについて話したいときは、遺言書の準備を扱う専門家へ相談する方法があります。富士市の『自分を生ききるためのエンディングノート』の財産の章(冊子8頁)には、公正証書遺言を作成する際の専門家相談が案内されています。

親が残したい希望を書き留めたら、弁護士や司法書士などに、必要な書面の準備を相談しましょう。具体的な遺言書の作り方や有効性を、家族がこのメモだけで判断することは避けます。

秘密情報の保管と渡し方を相談する

国民生活センターのデジタル終活の案内には、スマホのロックや契約情報がわからず、遺族が手続きに困る相談が掲載されています。サービス名やID・パスワードの整理、エンディングノートの活用も案内されています。

参考:国民生活センター今から考えておきたい「デジタル終活」-スマホの中の“見えない契約”で遺された家族が困らないために-。

秘密情報を残すときは、保管する場所、渡す相手、渡す時を一緒に相談しましょう。 この記事の共有範囲メモや家族のグループには貼り付けず、親が選んだ保管方法で扱います。

準備を詳しく知りたい方は、デジタル遺品の整理とパスワードの残し方を読んでみてください。LINEの扱いを相談したいときは、LINEアカウントの死後の手続きも参考にし、個別のサービスの最新案内へ進みましょう。

親にエンディングノートを渡すときのFAQ

渡す前後に迷いやすい三つの場面を、短い回答で振り返ります。

親が受け取らないときは、置いて帰ってよい?

受け取りを望まないときは、ノートを持ち帰ります。親の手元に置いて帰るのは、親がそうしたいと答えたときです。

渡した後は、家族が一緒に書いたほうがよい?

親が一人で書きたいときは、手伝いを頼まれるまで待っていてかまいません。一緒に書きたいと言われたら、手伝ってほしい欄を聞き、書き取った内容を親と読み返します。

書いたページは、きょうだいにも見せてよい?

誰にどのページを見せてよいか、親に尋ねてから伝える形です。自分が読んでよいと言われたときも、きょうだいへ伝えてよいかを改めて相談します。

まとめ|親に尋ねるひとことから始める

親を思うほど、今のうちに聞いておきたいことが浮かぶかもしれません。まずは「少し話してもいい?」と尋ね、親が残したいことをひとつ聞けたら、今日はそこで終えてかまいません。

ノートを埋める速さより、親が話す内容とペースを選べることを大切にしましょう。 今は書かないという希望も、家族が受け止められる答えのひとつです。

帰省前に、親へ何を尋ねるか整理したい方は、五つの欄の相談メモを手元の紙へ写してみてください。内容は親と話してから記入し、今日は話さないという返事なら、空欄のままで終えられます。

公式資料の確認日:2026年10月5日(日本時間)。配布やサービスの条件は、利用するときに各公式案内でご覧ください。

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この記事を書いた人

藤原まどかのアバター 藤原まどか ライター

全国紙の社会部記者として10年以上にわたり、介護・相続・高齢者福祉を専門に取材。退職後は終活ジャンルに特化したライターとして活動し、終活ガイド1級、AFP(ファイナンシャルプランナー)、終活カウンセラー初級の資格を取得。両親の終活を実践中で、自らの経験をもとに「家族の立場から見た終活」を伝えています。制度の正確な情報と生活者視点の両立を大切に、わかりやすく丁寧な情報発信を心がけています。

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