2026年4月1日から、不動産をお持ちの方に「住所変更登記」の申請が義務付けられます。
引っ越しや結婚・離婚で住所や氏名が変わったまま登記を放置している場合、変更日から2年以内に申請しなければ、5万円以下の過料が科される可能性があります。
本記事では、行政書士・宅地建物取引士の立場から、義務化の概要・手続きの流れ・費用・注意点までを整理して解説します。2026年3月時点の情報です。
- 住所変更登記の義務化は2026年4月1日施行。対象は不動産を持つすべての登記名義人
- 期限は変更日から2年以内。施行前の未登記分は2028年3月31日まで
- 「スマート変更登記」を使えば費用ゼロ・申請不要で義務を自動履行できる
住所変更登記の義務化とは
住所変更登記の義務化とは、不動産の登記名義人が住所や氏名・名称を変更した場合に、その変更日から2年以内に変更登記の申請をすることを法律で義務付ける制度です。根拠法令は不動産登記法第76条の5(2021年改正・2026年4月1日施行)です。
2024年4月に相続登記の義務化(同法第76条の2)がスタートしましたが、住所変更登記の義務化はその続編にあたる改正です。不動産登記法の改正に基づき、2026年4月1日から施行されます。
義務化の背景:所有者不明土地問題の深刻化
日本では、登記簿上の所有者の住所が古いままで現在の所有者と連絡が取れない土地・建物が増加しています。こうした「所有者不明土地」は、公共事業の妨げになるだけでなく、空き家・空き地問題の温床になることも少なくありません。
この問題を解消するため、国は2021年に不動産登記法を改正し、相続登記・住所変更登記の両方を段階的に義務化する方針を決定しました。2024年4月の相続登記義務化に続き、2026年4月から住所変更登記も義務の対象となります。
対象者:不動産を持つすべての人
義務化の対象は、登記簿上に所有権として名前が記載されている人(登記名義人)です。戸建て・マンション・土地など、いずれの不動産でも対象になります。
自分名義の不動産があり、過去に引っ越しや結婚・離婚をした経験がある場合は、登記簿の住所・氏名と現在の情報が一致しているか確認することをおすすめします。
—期限とスケジュール:いつまでに手続きが必要?
住所変更登記の義務化は、大きく2つの期限で整理できます。
| ケース | 期限 |
|---|---|
| 2026年4月1日以降に住所・氏名が変わった場合 | 変更日から2年以内 |
| 施行日前(2026年3月31日以前)にすでに変更していた場合 | 2028年3月31日まで(施行日から2年間の猶予) |
「まだ大丈夫」と思っていても、施行前の変更も対象になります。10年前・20年前の引っ越しで登記を変えていなかった場合でも、2028年3月31日が期限です。まず自分の登記簿を確認することから始めましょう。
相続登記との期限の違い
2024年4月に義務化された相続登記と混同されることがありますが、期限が異なります。
- 相続登記(不動産登記法第76条の2):相続を知った日から3年以内/違反した場合10万円以下の過料
- 住所変更登記(同法第76条の5):住所・氏名の変更日から2年以内/違反した場合5万円以下の過料
相続により不動産を取得した方は、相続登記と住所変更登記の両方が必要になるケースもあります。まとめて手続きすることで、手間を省くことができます。
—手続きの方法:3つの申請方法
住所変更登記の申請方法は、大きく3種類あります。状況に応じて選択できます。
方法1:スマート変更登記(無料・おすすめ)
国が新たに設けた「スマート変更登記」(正式名称:検索用情報の申出による職権登記)を利用すると、事前に申し出をしておくだけで、登記官が自動的に住所変更登記をおこなってくれます。本人が都度申請する必要がなく、登録免許税も非課税です。
- 管轄の法務局窓口またはオンラインで「検索用情報の申出」を行う
- マイナンバーカードを使った本人確認で「マイナンバー」を登録
- 住民票の住所・氏名が変更されると、法務局が住基ネット経由で自動検知
- 登記官が職権で変更登記を実施(本人への申請負担なし・費用なし)
制度の本格稼働は2026年4月ですが、申し出の受け付けは2025年4月21日からすでに開始されています。早めに申し出しておくことで、将来の手間を大幅に減らせます。
方法2:自分で申請(窓口・郵送・オンライン)
登記を自分で申請する場合、管轄の法務局(登記所)に申請書を提出します。窓口・郵送・オンラインの3つから選べます。
必要書類は以下のとおりです(一般的なケース)。
- 住所変更登記申請書
- 住民票(新住所が記載されたもの)または戸籍の附票
- 登録免許税の収入印紙(不動産1件につき1,000円)
引っ越しを繰り返していて、現在の住民票と登記簿上の住所がつながらないケースがあります。この場合は戸籍の附票(本籍地の市区町村で取得)を使うと、過去の住所の変遷を証明できます。
申請書の書式は法務局の窓口またはオンラインで取得できます。書類の不備があると補正が必要になるため、不安な場合は司法書士に依頼することを検討してみてください。
方法3:司法書士に依頼
登記申請は司法書士の専門業務です。書類の準備から申請まで一括で代行してもらえます。費用の目安は、司法書士報酬として1〜3万円程度が一般的とされていますが、事務所や案件によって異なります。
複数の不動産をお持ちの場合や、相続登記とあわせて手続きする場合は、司法書士への依頼を検討するのも合理的な選択です。
—費用の目安
住所変更登記にかかる費用は、申請方法によって変わります。
| 申請方法 | 登録免許税 | その他費用 |
|---|---|---|
| スマート変更登記 | 無料(非課税) | なし |
| 自分で申請 | 不動産1件につき1,000円 | 住民票取得費用(300円前後)など |
| 司法書士に依頼 | 不動産1件につき1,000円 | 司法書士報酬(1〜3万円程度が目安) |
複数の不動産がある場合、登録免許税は件数分かかります。たとえば土地と建物を別々に所有している場合は、2,000円が目安です。
—罰則:5万円以下の過料について
正当な理由がないまま期限を過ぎて申請を怠った場合、不動産登記法第164条第2項の規定により5万円以下の過料が科される可能性があります。ただし、この過料は申請期限を過ぎただけで即座に科されるわけではありません。
法務局から「一定期間内に申請してください」という催告を受けたにもかかわらず、正当な理由なく期間内に申請しなかった場合に、はじめて過料の対象となります。催告に応じて申請すれば、過料は回避できます。
出典:法務省|住所等変更登記の義務化特設ページ
- 重篤な病気・入院により申請が困難だった場合
- 天災・事故など不可抗力で申請できなかった場合
- DV被害等により住所の公開が困難な場合
とはいえ、催告が来てから慌てて対応するより、期限内に自主的に手続きを済ませておく方が確実です。スマート変更登記を活用すれば、費用ゼロで義務を履行できます。
—行政書士の視点から見た注意点
行政書士として相続・不動産整理の相談を受ける中で、「登記のことは後で考えよう」と先送りになるケースを多く見てきました。
住所変更登記を放置しておくと、不動産の売却や担保設定の際に手続きが複雑になります。実際に、売却を進める中で登記の住所が現住所とかけ離れていることが発覚し、金融機関から登記修正を求められて売却が数週間単位で遅延したケースは珍しくありません。義務化とは別に、実務的な理由からも早期の対応が望ましいといえます。
特に、親から不動産を相続した場合は、相続登記と住所変更登記をセットで確認することをおすすめします。登記簿に記載されている住所が何十年も前のもので、現在の状況と大きく乖離しているケースは珍しくありません。
—よくある質問(FAQ)
Q1. 住所変更登記は自分でできますか?
できます。法務局の窓口・郵送・オンラインの3方法から選べます。書類準備に不安がある場合はスマート変更登記または司法書士への依頼をご検討ください。
Q2. 結婚で氏名が変わった場合も対象ですか?
対象です。住所変更だけでなく、結婚・離婚・養子縁組による氏名変更も申請義務があります。2026年4月以降の変更は2年以内、それ以前は2028年3月31日が期限です。
Q3. スマート変更登記の申し出はどこでできますか?
管轄の法務局窓口またはオンラインで申し出できます。マイナンバーカードを使った電子申請に対応しており、2025年4月21日から受付が始まっています。
Q4. 相続した不動産は相続登記と住所変更登記どちらを先にすればいいですか?
相続登記(名義移転)を先に行い、その後に自分の住所変更登記を行うのが正しい順序です。相続登記の期限は「相続を知った日から3年以内」です。
Q5. 登記しないとどうなりますか?
法務局の催告後も申請しない場合、不動産登記法第164条第2項により5万円以下の過料が科されます。また不動産売却時に手続きが複雑化するなど実務上の不利益も生じます。
Q6. 亡くなった親(被相続人)の住所変更登記は必要ですか?
原則不要です。被相続人名義の不動産は相続登記で相続人名義に変更するため、故人の住所変更は不要です。ただし相続登記の手続きで除票・戸籍の収集が必要になります。
Q7. 海外に住んでいる場合はどうすればいいですか?
住基ネットに登録されない海外居住者はスマート変更登記を利用できません。在外公館で取得した在留証明書などを使って自分で申請するか、日本国内の代理人(司法書士など)に委任する方法があります。
—まとめ
住所変更登記の義務化について、要点を整理します。
- 根拠法令:不動産登記法第76条の5(2021年改正)
- 施行日:2026年4月1日
- 対象:不動産の登記名義人(住所・氏名を変更した人)
- 期限:変更日から2年以内/施行前の変更は2028年3月31日まで
- 費用:スマート変更登記なら無料・自分で申請なら不動産1件1,000円
- 罰則:催告後も申請しない場合、第164条第2項により5万円以下の過料
- 故人の住所変更:被相続人分は不要。相続登記を先に行う
2024年の相続登記義務化に続き、住所変更登記も義務の対象となりました。どちらも「所有者不明土地」問題への対策として、国が進める不動産登記の適正化の一環です。
手続きに不安がある場合や、相続と合わせて対応したい場合は、司法書士や行政書士に相談することを検討してください。
—参考資料・一次ソース
行政書士/終活カウンセラー上級/成年後見制度アドバイザー/宅地建物取引士
相続・不動産・終活分野の手続きを専門とする行政書士。おくりびとジャーナルにて制度・法律・費用に関する記事を執筆。
免責事項:本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の法的助言を行うものではありません。具体的な手続きや判断については、司法書士・行政書士等の専門家にご相談ください。掲載情報は2026年3月時点のものであり、法改正等により変更となる場合があります。
相続の手続きについて、専門家監修の書籍でより深く学べます。



