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認知症の親の財産管理【家族信託・成年後見の選び方を行政書士が解説】

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親の物忘れが最近ひどくなってきた。病院で「認知症の疑い」と言われた。そんな知らせを受けたとき、「財産のことはどうすればいいのか」と不安になる方は多いかと思います。

認知症が進行すると、銀行口座が使えなくなる可能性があります。対策を取っておかないと、生活費の引き出しすらできなくなるケースがあります。

本記事では、認知症の財産管理対策として有効な「家族信託」と「成年後見制度」の2つを、費用・手続き・向いているケースで比較します。ご家族の状況に合った選択肢を見つけるための参考にしてください。

目次

認知症になると財産管理はどうなるのか?

認知症になると、本人の「判断能力」の低下によって財産管理に深刻な問題が起きます。

日本の民法では、意思無能力の状態(自分の行為の結果を理解できない状態)で行った法律行為は無効になります(民法第3条の2・2020年4月施行)。これが銀行取引や不動産手続きにも影響を与えます。

日本の認知症患者数(2025年時点)

厚生労働省の調査研究によると、2025年の認知症高齢者数は約471.6万人(高齢者の12.9%)と推計されています(厚生労働省「認知症および軽度認知障害の将来推計」)。2030年には523万人に増加する見込みです。財産管理の対策は、親の問題だけでなく自分自身の備えとしても重要です。

認知症で銀行口座が凍結されるのはなぜか?

銀行口座の「凍結」は、法律上の強制ではありません。銀行が預金規定に基づいて、任意で取引を停止するものです。

銀行が口座凍結を判断する主なケースは2つあります。

  • 口座名義人が認知症であることを銀行が把握した場合
  • 成年後見の申立が家庭裁判所に通知され、銀行に情報が届いた場合

口座が凍結されると、家族であっても預金の引き出し・振込・定期解約ができなくなります。施設入居費や医療費の支払いにも支障が出るため、早めの対策が必要です。

認知症の親が「判断能力なし」と判定された場合に何が起きるか?

判断能力がない状態とは、医師や家庭裁判所が「自分の行為の結果を理解できない」と判断した状態です。この状態になると、以下のことができなくなります。

できなくなること具体的な影響
不動産の売却・賃貸老人ホームの入居費に充てることができない
預金の引き出し・解約生活費・医療費の支払いが困難になる
遺言書の作成財産の分け方を本人が決められない
保険の加入・解約新たな保険契約ができない

対策は「今のうち」に動くことが大前提

家族信託の契約も、任意後見の契約も、判断能力が失われてからでは締結できません。判断能力があるうちに動き出すことが、すべての対策の前提です。「まだ大丈夫」と思っているうちに対策を始めることをおすすめします。

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家族信託とは?認知症対策として有効な理由

家族信託とは、財産の管理・処分を信頼できる家族に委託する仕組みです。信託法(2006年改正・2007年9月施行)に基づく制度で、ざっくり言えば「親が持っている財産の管理を、信頼できる子どもに任せる契約」です。

👥 家族信託の3者の関係
委託者
財産を持つ親
(信託をお願いする人)
受託者
管理を任せる子
(財産を預かって管理する人)
受益者
利益を受け取る人
(多くは親本人)

認知症対策として注目される最大の理由は、契約時に判断能力があれば、認知症が進行した後も受託者が継続して財産管理できるからです。

家族信託の仕組みと基本的な流れはどうなっているか?

家族信託を始めるには、信託契約書を公正証書で作成します。その後、信託財産(不動産・預貯金など)を受託者名義に移転して開始します。

1 現状把握 財産一覧を 整理する 2 専門家相談 司法書士・弁護士に 相談・設計 3 契約・公正証書 公証役場で 公正証書を作成 4 信託開始 受託者が 財産管理を開始

家族信託の費用はどのくらいかかるか?

家族信託の費用は、一般的に信託財産額の1%前後が目安とされ、総額50〜100万円程度になるケースが多いです。

費用の種類目安金額備考
司法書士・弁護士報酬30〜80万円程度信託財産の規模・複雑さによる
公正証書作成費用3〜8万円程度公証役場の手数料(信託財産額による)
不動産信託登記費用固定資産税評価額の0.3〜0.4%不動産が含まれる場合
信託口口座開設費用金融機関による信託専用口座の開設

費用の幅が広い理由は、信託財産の種類・金額・設計の複雑さによって大きく変わるためです。複数の専門家から見積もりを取ることをおすすめします。

家族信託に向いているケース・向いていないケースとは?

家族信託が向いているのは、主に以下のケースです。

  • 不動産を多く持つ家庭(売却・賃貸の意思決定を柔軟に行いたい)
  • 信頼できる家族(子・兄弟)がいる
  • 財産の活用方法を生前に決めておきたい
  • 二次相続(孫への財産承継)まで設計したい

一方、家族信託では対応できない場面もあります。

家族信託でできないこと(重要な注意点)

家族信託は「財産の管理・処分」が対象です。「身上監護(介護施設への入居手続き・医療同意など)」には対応できません。介護の意思決定まで対応が必要な場合は、成年後見制度との併用を検討する必要があります。

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成年後見制度とは?3つの種類と選び方

成年後見制度とは、認知症・知的障害・精神障害などで判断能力が不十分な人を、家庭裁判所が選任した後見人が法律的に支援する制度です(民法第7条〜第21条)。大きく「法定後見」と「任意後見」の2つに分かれます。

法定後見・保佐・補助の違いは何か?

法定後見制度には、判断能力の程度に応じて3段階があります。

種類対象者(判断能力の状態)後見人の権限
後見(こうけん)判断能力がほとんどない状態財産管理全般・日常生活以外のすべての行為を代理
保佐(ほさ)判断能力が著しく不十分な状態重要な法律行為への同意・取消権
補助(ほじょ)判断能力が不十分な状態特定の法律行為への同意・取消権(申立の範囲内)

認知症が進行している場合、多くは「後見」に区分されます。

任意後見と法定後見、どちらを選ぶべきか?

任意後見は、判断能力があるうちに自分で後見人を選んで契約しておく制度です(任意後見契約に関する法律)。

法定後見は、判断能力を失った後に家族が家庭裁判所に申し立て、裁判所が後見人を選任します。

比較項目任意後見法定後見
契約のタイミング判断能力があるうちに判断能力を失った後
後見人の選び方本人が選ぶ家庭裁判所が選任
後見人になれる人信頼できる人(家族・知人・専門家)家族・専門家(裁判所の裁量)
財産管理の柔軟性契約内容による裁判所の監督下で制限あり

成年後見の費用と手続きにかかる期間はどれくらいか?

法定後見の申立費用の目安は以下のとおりです(裁判所公式)。

費用の種類目安金額
申立手数料(収入印紙)後見・保佐・補助いずれも800円(代理権付与等は別途800円追加)
後見登記手数料(収入印紙)2,600円
鑑定費用5〜20万円程度(必要と判断された場合のみ)
司法書士・弁護士への依頼料10〜30万円程度
後見人報酬(月額)専門家後見人:月2〜6万円程度(管理財産額に応じ家庭裁判所が決定)

成年後見制度の大きなデメリット:一度開始したら原則やめられない

成年後見制度は、本人の判断能力が回復しない限り、途中でやめることが原則できません。後見人への報酬も毎月継続して発生します。長期にわたる費用負担を事前に見込んでおく必要があります。

申立から後見開始まで、最高裁判所の統計では2ヶ月以内が全体の約71.8%、4ヶ月以内が約93.7%(令和5年成年後見関係事件概況)です。多くのケースで2〜4ヶ月程度を見込んでおくと良いでしょう。

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家族信託と成年後見、どちらを選ぶべきか?比較表で解説

2つの制度を主要な観点で比較します。

比較項目家族信託成年後見(法定)
利用できるタイミング判断能力があるうちのみ判断能力低下後でも申立可
財産管理の柔軟性高い(契約内容に従い自由に管理)低い(裁判所の監督・許可が必要)
身上監護できないできる(法定後見・任意後見)
不動産売却受託者の判断でできる家庭裁判所の許可が必要
初期費用総額50〜100万円程度10〜30万円程度(専門家依頼時)
継続費用基本的に不要(受託者が家族の場合)専門家後見人の場合:月2〜6万円
裁判所の関与なしあり(開始・報酬・重要事項すべて)
制度の終了信託契約の目的達成で終了本人死亡か判断能力回復まで原則継続

家族信託が向いているのはどんな家庭か?

家族信託は、以下の状況に当てはまる家庭に向いています。

  • 親にまだ判断能力があり、早めに対策を取りたい
  • 不動産を持っており、将来の売却・管理を子に任せたい
  • 信頼できる子・兄弟がいる
  • 介護費用を不動産の売却益でまかないたい
  • 二次相続(孫への財産承継)まで計画したい

成年後見が向いているのはどんな家庭か?

成年後見制度は、以下の状況に当てはまる家庭に向いています。

  • すでに親の判断能力が低下しており、家族信託の締結が困難な状態
  • 介護施設への入居手続きなど「身上監護」も含めて対応が必要
  • 家族間で財産管理の方針が合意できず、中立的な後見人が必要
  • 行政手続き・訴訟など後見人の法的権限が必要な場面がある

両方を組み合わせることは可能か?

家族信託と任意後見を組み合わせる設計は可能で、それぞれの弱点を補えます。

組み合わせ活用の例

「家族信託」で財産管理(不動産・預金)を子が担当し、「任意後見」で身上監護(入院手続き・介護施設の選定)を別の信頼できる人に任せる設計が可能です。どちらの制度も判断能力があるうちに準備する必要があります。

認知症の親の財産管理を始めるための3つのステップ

何から手をつければいいか迷う方のために、まず3つのステップで整理します。

ステップ1:現在の財産状況を把握する

最初にすべきことは、親の財産を一覧化することです。

  1. 預貯金:金融機関名・口座番号・残高の概算
  2. 不動産:固定資産税の通知書で確認(住所・評価額)
  3. 生命保険:保険証券を確認(契約者・被保険者・受取人)
  4. 株式・投資信託:証券会社の取引明細で確認
  5. 借入・ローン:残高があれば把握しておく

財産の全体像が見えると、どの制度が適しているかが判断しやすくなります。エンディングノートに書き留めておくと、家族も把握しやすくなります。

ステップ2:家族で方針を話し合う

財産管理の対策は、家族全員で話し合いながら進めることが大切です。特に兄弟姉妹がいる場合、以下の点を事前に話し合っておくことをおすすめします。

  • 誰が受託者・後見人候補になるか
  • 親の介護方針(施設か在宅か)と費用をどう確保するか
  • 不動産の売却・維持についての方針
  • 兄弟間で財産管理に不満が出ないよう、透明性を確保する方法

ステップ3:専門家(行政書士・司法書士)に相談する

家族信託の設計や任意後見契約の作成は、専門的な知識が必要です。どの専門家に相談するかは、対策の種類によって変わります。

  • 家族信託の設計・契約書作成:司法書士・弁護士が対応(不動産登記を含む場合は司法書士が一般的)
  • 任意後見の契約書作成:司法書士・弁護士・行政書士が補助し、公証役場で公正証書として作成
  • 法定後見の申立:司法書士・弁護士が代理申立(本人申立も可能)

まずは無料相談を活用して、ご家族の状況に合ったアドバイスを受けることをおすすめします。一人で抱え込まず、専門家に相談しながら進めれば大丈夫です。

よくある質問

認知症になった後でも家族信託はできますか?

認知症が進んで判断能力がない状態になった後では、家族信託の契約はできません。家族信託は「委託者(親)が契約内容を理解できる判断能力があること」が前提です。認知症の診断を受けた段階でも、軽度であれば締結できる場合がありますが、公証人が判断能力を確認するため、医師の診断書が必要になることもあります。早めの相談が重要です。

家族信託に反対する家族がいた場合はどうなりますか?

家族信託の契約は、委託者(財産を持つ本人)と受託者(管理を任せる家族)の2者で締結します。他の家族全員の同意は法律上必要ではありません。ただし、反対する家族がいる場合、後で「騙された」「勝手に決めた」というトラブルになりやすいため、事前に家族全員で話し合いの機会を設けることを強くおすすめします。

成年後見人は必ず弁護士や司法書士が選ばれるのですか?

家族が申立人になっても、必ずしも家族が後見人に選ばれるわけではありません。家庭裁判所は申立された後見人候補者を参考にしますが、最終的な選任は裁判所が判断します。財産が多い場合や家族間に争いがある場合、専門家(弁護士・司法書士・社会福祉士等)が後見人に選ばれるケースが増えています。

後見人になった場合、どんな仕事をするのですか?

後見人の主な仕事は、財産管理(預貯金の管理・不動産の管理・収支の記録)と身上監護(介護施設の契約・医療機関の手続き・行政手続き)の2つです。毎年、家庭裁判所に財産目録・収支報告書を提出する義務があります。不動産の売却など重要な行為には、事前に家庭裁判所の許可が必要です。

まとめ

この記事のポイントをおさらいします

  • 認知症が進行すると、銀行口座の凍結や法律行為ができなくなるリスクがある(民法第3条の2)
  • 家族信託は判断能力があるうちに設定する制度。財産管理の自由度が高く、裁判所の関与がない
  • 成年後見は判断能力低下後でも申立できる。身上監護もカバーするが、月2〜6万円の継続費用がかかる
  • どちらの制度も「今のうちに準備する」ことが重要
  • 家族の状況に合わせて、専門家(司法書士・行政書士)に相談することをおすすめします

認知症の財産管理対策は、「今日から始められる」準備です。まずは親の財産状況を整理し、家族で話し合う機会を作るところから始めてみてください。

制度の仕組みが複雑に感じても、専門家への相談でかなりクリアになります。一人で抱え込まず、小さな一歩から動き出すことが、将来の大きな安心につながります。

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この記事を書いた人

井上剛志のアバター 井上剛志 行政書士・終活カウンセラー上級

行政書士として相続・遺言・成年後見などの実務に従事し、終活分野の相談を多数対応。終活カウンセラー上級、成年後見制度アドバイザー、宅地建物取引士の資格を活かし、法的リスクへの備えや不動産整理まで総合的にカバーしています。親の介護と相続を経験したことから、実務知識と当事者視点をあわせた情報提供を重視。読者にとって「すぐに使える終活知識」をモットーに、わかりやすく丁寧な解説を行います。

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