認知症の親の財産管理【家族信託・成年後見の選び方を行政書士が解説】

📋 この記事でわかること
  • 親が認知症になると銀行口座が凍結され、財産管理が法的に制限される
  • 対策は「認知症前」の家族信託か任意後見、「認知症後」は法定後見制度の3択
  • 認知症が進行してからでは選択肢が法定後見のみになる。動くなら今がタイミング

親が認知症になると、本人の意思確認が取れないことを理由に銀行が口座を凍結し、不動産の売却や預金の引き出しができなくなる可能性があります。

本記事では、認知症の進行段階別に使える財産管理の方法・手続きの流れ・費用を行政書士の視点から整理します。「まだ早い」と思っているうちに対策のタイミングを逃すケースが多いため、早めの確認をおすすめします。※2026年3月時点の情報です。

特に注意が必要なのは「認知症になってから相談しようと思っていたら、できることが法定後見制度のみになっていた」というケースです。家族信託も任意後見も、本人に判断能力がある段階でしか設計できません。


目次

認知症と財産管理の問題

口座凍結で介護費用が引き出せなくなる

金融機関は本人の財産保護を目的として、認知症が疑われる場合に口座取引を制限することがあります。介護施設の入居費用や医療費を親の預金から支払おうとしても、手続きが取れなくなるケースがあります。

不動産の売却・活用ができなくなる

本人が認知症になった後は不動産の売買契約が結べなくなります。自宅を売却して介護費用に充てる計画があっても、認知症発症後では法的に手続きが進められません。


進行段階別の対応方法

状況使える制度特徴
認知症になる前(元気なうち)家族信託柔軟な財産管理。初期費用50〜100万円程度
認知症になる前(元気なうち)任意後見制度認知症後に備える後見人を事前に決める
軽度の認知症家族信託(要確認)公証人が判断能力を認めれば可能なケースあり
重度の認知症法定後見制度家庭裁判所が後見人を選任。継続費用が発生

認知症前:家族信託が最有力

家族信託は本人の判断能力がある間に設計できる制度で、子が受託者として親の財産を管理できるようになります。介護費用の支払い・不動産の管理・処分まで受託者が担えるため、認知症後の資産凍結を防ぐ最も有効な手段のひとつです。初期費用は50〜100万円程度が目安とされています。

認知症前:任意後見制度

任意後見制度は、本人が元気なうちに信頼できる後見人を選んでおき、認知症が進行した後に後見業務を開始する制度です。公正証書で任意後見契約を締結し、認知症発症後に家庭裁判所が「任意後見監督人」を選任することで発動します。

認知症後:法定後見制度

すでに認知症が進行していて判断能力が失われている場合は、法定後見制度を使います。家庭裁判所が後見人を選任し、財産管理をおこないます。専門職後見人(弁護士・司法書士)が選任された場合は月2〜6万円程度の継続費用が発生します。


家族信託と成年後見制度の比較

比較項目家族信託成年後見制度(法定)
利用できるタイミング認知症前のみ認知症後も利用可
財産管理の柔軟性高い低い(家裁の監督下)
初期費用50〜100万円程度10〜30万円程度
継続費用原則なし月2〜6万円(専門職後見人の場合)
不動産の売却受託者が担える家裁の許可が必要なケースあり

よくある質問(FAQ)

Q:親が軽度の認知症でも家族信託はできますか?

軽度の認知症であれば、公証人が判断能力を認めた場合に契約できる可能性があります。ただし認知症の進行リスクがあるため、早めに専門家へ相談することをおすすめします。

Q:成年後見人に家族はなれますか?

法律上は可能ですが、家庭裁判所が専門職後見人(弁護士・司法書士・社会福祉士等)を選任するケースが多いです。家族が後見人になれるかどうかは個別の事情によります。

Q:銀行口座が凍結されたらどうすればよいですか?

法定後見制度を申し立て、後見人が選任された後に銀行手続きを進める流れになります。緊急の資金需要がある場合は、弁護士または司法書士への早急な相談をおすすめします。


まとめ

認知症と親の財産管理は「いつ動くか」がすべてです。

  • 認知症前の対策:家族信託(最も柔軟)・任意後見制度
  • 認知症後の対応:法定後見制度(選択肢が限られる)
  • 家族信託は初期費用50〜100万円。成年後見の10年コストより安いケースが多い
  • 「まだ早い」と思っているうちに動くことがリスク回避の基本

▶ 関連記事:家族信託のデメリット【7つの落とし穴と費用・回避策】


参考資料・一次ソース

免責事項:本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の法的・医療的助言を行うものではありません。具体的な手続きや判断については、弁護士・行政書士・医師などの専門家にご相談ください。掲載情報は執筆時点のものであり、法改正などにより変更となる場合があります。

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監修・執筆:井上剛志
行政書士/終活カウンセラー上級/成年後見制度アドバイザー/宅地建物取引士
相続・不動産・終活分野の手続きを専門とする行政書士。おくりびとジャーナルにて制度・法律・費用に関する記事を執筆。

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    この記事を書いた人

    井上剛志のアバター 井上剛志 行政書士・終活カウンセラー上級

    行政書士として相続・遺言・成年後見などの実務に従事し、終活分野の相談を多数対応。終活カウンセラー上級、成年後見制度アドバイザー、宅地建物取引士の資格を活かし、法的リスクへの備えや不動産整理まで総合的にカバーしています。親の介護と相続を経験したことから、実務知識と当事者視点をあわせた情報提供を重視。読者にとって「すぐに使える終活知識」をモットーに、わかりやすく丁寧な解説を行います。

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