- 家族信託は親が認知症になる「前」に契約しないと無効になる制度上の制約がある
- 専門家依頼の費用は50〜100万円程度。成年後見制度(10年で250〜730万円)より長期的には安いケースが多い
- 節税効果はなく、受託者の負担が重い点が主な落とし穴。対策を知れば回避できる
家族信託のデメリットでもっとも見落とされやすいのは、「認知症になってから契約しようとしても遅い」という点です。
家族信託は本人に判断能力がある状態でしか契約できません。「そのうちやろう」と先送りにしているうちに親の認知症が進行し、手続きが取れなくなるケースが増えています。一方で、デメリットを正確に把握すれば回避策も立てやすくなります。
本記事では、行政書士の視点から家族信託の7つのデメリットと具体的な対策、費用相場、成年後見制度との比較を整理します。「家族信託が本当に自分の家族に向いているか」を判断する材料としてご活用ください。
※本記事は2026年3月時点の情報をもとに作成しています。
家族信託の7つのデメリット
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家族信託は設計を誤ると「デメリット」が現実になります。契約前に、相続・家族信託に詳しい専門家(弁護士法人グループ)に一度相談することをお勧めします。無料で話を聞いてもらえます。
家族信託・相続を無料で相談する →家族信託には大きく分けて「費用・制度面」「家族関係面」「税務面」の3カテゴリにデメリットがあります。
それぞれ回避策とあわせて確認してください。
①費用が50〜100万円以上かかる
専門家(司法書士・弁護士)に依頼した場合の費用相場は、信託財産に不動産がない場合で30〜70万円程度、不動産がある場合で50〜100万円以上になるケースがほとんどです。
主な費用内訳は次のとおりです。
| 費用項目 | 目安金額 |
|---|---|
| コンサルティング費用 | 信託財産評価額の1〜1.1%(最低33万円程度) |
| 信託契約書作成費用 | 11〜16万円程度 |
| 公証役場費用 | 数万円 |
| 登録免許税(不動産あり) | 固定資産税評価額の0.3〜0.4% |
| 信託登記費用(不動産あり) | 11〜16万円程度 |
ただし、後述する成年後見制度と比較すると、長期的にみてコストを抑えられるケースがあります。費用単体ではなく、制度全体のコストで比較することが重要です。
②認知症になってからでは手続きできない
家族信託の契約には、委託者(財産を預ける人)の判断能力が必要です。認知症が進行して意思能力が失われた後は、契約自体が無効になります。
軽度の認知症であれば契約できる可能性はありますが、診断を受けてから手続きまでに数ヶ月かかることが多く、進行リスクがあります。「親が元気なうちに」動き始めることが最大のリスク回避策です。
③受託者(財産を管理する人)の負担が重い
受託者は信託財産の管理・処分・記帳・報告義務を継続的に担います。善管注意義務(民法第644条)を負うため、適切な管理ができなかった場合には損害賠償責任が生じる可能性があります。
受託者候補が一人しかいない場合や、長期間の管理が見込まれる場合は、「信託監督人」の設置や複数受託者制の導入を検討することで負担を分散できます。
④家族間のトラブルが起きやすい
受託者に特定の子を選んだ場合、他の相続人から「なぜあの人が管理するのか」と不満が出るケースがあります。受託者が信託財産を私的に流用するリスクも否定できません。
信託契約書に「受益者への定期報告義務」を盛り込むことや、信託監督人を置くことで透明性を確保することが有効です。家族信託を進める前に、相続人全員への説明と合意形成を丁寧におこなってください。
⑤相続税の節税効果はない
家族信託には直接的な節税効果はありません。委託者が亡くなった場合、信託財産も含めて委託者の全財産が相続税の課税対象になります。
「家族信託で相続税を減らせる」と誤解しているケースがありますが、節税効果は期待できません。相続税対策として検討する場合は、生前贈与・暦年贈与・小規模宅地等の特例など他の手段と組み合わせる必要があります。
⑥信託できない財産がある
農地・年金受給権・生活保護受給権などは信託財産に組み込めません。また、不動産を信託財産にした場合、将来売却するときに「3,000万円特別控除」が使えないケースがあります。
信託財産の範囲を設計する段階で、売却予定がある不動産や農地が含まれていないかを専門家とともに確認してください。
⑦経験豊富な専門家が少ない
家族信託は比較的新しい制度であるため(信託法改正:2006年)、実務経験が豊富な専門家はまだ限られています。知識が不十分な専門家が作成した契約書では、後々に法的な問題が発生するリスクがあります。
依頼先を選ぶ際は、家族信託の実績件数・専門士の資格保有・相談事例の公開状況などを確認することをおすすめします。
それでも家族信託が有効な3つのケース
デメリットがある一方で、家族信託が特に有効に機能するケースがあります。
親が認知症になる前に財産管理を委ねたい
成年後見制度は認知症発症後にしか使えませんが、家族信託は元気なうちに設計できます。親が70代に差し掛かった段階で検討を始めることで、タイムリミットに余裕が生まれます。
特に、親が単独で不動産を所有しており、認知症になると売却・管理ができなくなるケースでは、家族信託の設計が有効です。
成年後見制度の継続的なコストを避けたい
成年後見制度は、専門職後見人(弁護士・司法書士)が選任された場合、月2〜6万円程度の継続費用が発生します。10年間続けると総額250〜730万円になるケースがあります。
家族信託の初期費用は50〜100万円程度ですが、継続的なコストは発生しません。長期間の財産管理が見込まれる場合は、トータルコストで比較することが重要です。
不動産の管理・処分を子に任せたい
親が施設に入居し、自宅不動産を売却して介護費用に充てたい場合、認知症になってからでは売却の意思確認が取れず手続きが止まります。
家族信託で受託者に売却権限を与えておけば、親の判断能力が低下した後も受託者が手続きを進めることができます。
費用内訳と相場【専門家依頼 vs 自分でやる】
専門家に依頼した場合(50〜100万円程度)
司法書士・弁護士に依頼した場合の総費用は、信託財産に不動産がない場合で30〜70万円、不動産がある場合で50〜100万円以上が目安とされています。
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行政書士は不動産登記ができないため、不動産が絡む場合は司法書士への依頼が適切です。
自分でやる場合(20万円程度〜)
信託契約書の作成・公証役場への手続き・信託口口座の開設を自分でおこなう場合、登録免許税などの実費のみで20万円程度が目安とされています。
ただし、信託契約書の内容に不備があると後々の手続きで問題が生じる可能性があります。不動産が含まれる場合・相続人が複数いる場合は、専門家への相談を検討してください。
成年後見制度との費用比較
| 比較項目 | 家族信託 | 成年後見制度 |
|---|---|---|
| 初期費用 | 50〜100万円程度 | 10〜30万円程度 |
| 継続費用 | なし(原則) | 月2〜6万円(専門職後見人の場合) |
| 10年間の総費用 | 50〜100万円程度 | 250〜730万円程度 |
| 柔軟性 | 高い(設計次第) | 低い(家庭裁判所の監督下) |
| 財産処分の自由度 | 受託者が担える | 家裁の許可が必要なケースあり |
費用だけでなく、財産管理の柔軟性・家庭裁判所の関与の有無を合わせて比較することが大切です。
よくある質問(FAQ)
Q:認知症になってから家族信託はできますか?
軽度の認知症であれば、公証人が判断能力を認めた場合に契約できる可能性があります。ただし認知症が進行してからでは困難なため、親が元気なうちに検討することをおすすめします。
Q:家族信託と生前贈与はどちらがよいですか?
目的が異なるため単純な優劣はありません。財産管理の継続性を求める場合は家族信託、相続税の節税を目的とする場合は生前贈与(暦年贈与)が有効です。状況によって組み合わせるケースもあります。専門家への相談をおすすめします。
Q:受託者には誰でもなれますか?
成年に達した個人であれば原則として受託者になれます。法人も受託者になれます。ただし受託者には善管注意義務が課されるため、信頼できる人物であることが重要です。
Q:家族信託は途中で変更・解除できますか?
委託者と受託者・受益者の合意があれば変更・解除が可能です。ただし委託者が認知症になった後は本人の意思確認ができないため、変更が困難になります。当初の契約設計が重要です。
Q:家族信託にする財産に上限はありますか?
法律上の上限はありません。ただし信託財産が高額になるほど初期費用も増加します。必要な財産を絞って設計することでコストを抑えることができます。
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まとめ
家族信託は柔軟な財産管理を実現できる一方、把握しておくべきデメリットが複数あります。
- 認知症になる前に契約しないと手続きが取れなくなる
- 専門家依頼の費用は50〜100万円程度が目安
- 節税効果はなく、受託者の負担・家族間トラブルに注意が必要
- 信託できない財産(農地・年金受給権等)がある
- 成年後見制度と比較するとトータルコストが低いケースが多い
「家族信託が自分の家族に向いているか」を判断するには、財産の種類・相続人の構成・認知症リスクなどを総合的に考える必要があります。まずは行政書士・司法書士への相談を検討してください。
参考資料・一次ソース
免責事項:本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の法的・医療的助言を行うものではありません。具体的な手続きや判断については、弁護士・行政書士・医師等の専門家にご相談ください。掲載情報は執筆時点のものであり、法改正等により変更となる場合があります。
行政書士/終活カウンセラー上級/成年後見制度アドバイザー/宅地建物取引士
相続・不動産・終活分野の手続きを専門とする行政書士。おくりびとジャーナルにて制度・法律・費用に関する記事を執筆。
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