親のスマホ・パソコンをどうする?デジタル遺品整理で思い出を守るコツ

「親のスマホ、開けられなくて写真が取り出せない」

そんな声が増えています。

60代以上の約9割がスマートフォンを持つ時代。家族旅行の写真、孫の成長記録、何気ない日常のやりとり。そうした「形のない思い出」が、パスワードひとつで届かなくなってしまうケースは珍しくありません。

実はAppleにもGoogleにも、家族がアクセスするためのルートが用意されています。自分たちで難しければ、専門業者という選択肢もあります。

この記事では、パスワード解除の具体的な手順から、信頼できる業者の選び方、そして生前にできる備えまで、順を追って見ていきましょう。

目次

デジタル遺品整理とは何か?

デジタル遺品整理とは、故人のスマホやPCに残されたデータを、家族が安全に守り、整えることをいいます。写真やメール、連絡先といった記録を、家族で少しずつ確認していく作業です。

最近では「デジタル終活」という名称で少しづつ広まっているようです。そんなデジタル遺品整理について、まずは基礎知識をおさらいしましょう。

デジタル遺品整理を「先延ばし」にしている人が多い

一般社団法人 終活協議会における2025年の調査で、印象的な数字があります。

デジタル終活の必要性を感じている人は89.4%。でも、実際に準備している人はわずか8.4%。「考えていない」が77.8%を占めています。

つまり、必要だとわかっていても動けていない人がほとんど。「やらなきゃと思いつつ、何から始めればいいかわからない」という方が多いのです。

この記事を読んでいるあなたも、もしかしたら同じ気持ちかもしれません。だからこそ、「今日できる小さな一歩」から始めることが大切だと感じています。

出典:一般社団法人 終活協議会「【2025年最新調査】 デジタル終活「スマホやSNSをどうするか」は意識されながらも、実際の行動には移されにくい様子|終活ガイド資格者523人に聞いた意識調査」

そもそもデジタル遺品整理は必要なの?

確実に必要です。モバイル社会研究所の「デジタル社会を生きる 今どきシニアのICT利用」によると、60代のスマホ所有率は94%、70代でも85%に達しています。

最近のスマホは、写真を「クラウド」と呼ばれるインターネット上の保管場所に自動で保存する設定になっていることが多いです。

iPhoneなら「iCloud(アイクラウド)」、Androidなら「Googleフォト」がその代表例。スマホ本体が手元にあっても、パスワードがわからないとこれらの写真にアクセスできません。

また、お金の管理も同様です。65歳以上の35%がネット銀行などのオンライン金融サービスを利用しているというデータがあります。通帳やカードが手元にないため、家族が存在に気づかないまま放置されるリスクがあります。

このような理由から親の、そして自分のデジタル遺品整理(デジタル終活)がいかに大切かがわかります。

デジタル遺品整理を放置すると何が起きるのか?

デジタル遺品をそのままにしておくと、家族が知らないところで負担が増えてしまうことがあります。

特にサブスク契約や資産の把握漏れは、気づかないうちに家計を圧迫する原因になりかねません。

サブスク課金で思いがけぬ出費が発生

「サブスク」とは、月額や年額で料金を払い続けることで使えるサービスのこと。Netflix(動画配信)、Spotify(音楽配信)、新聞の電子版などが代表例です。

ナイル株式会社の調査によると、利用者は平均2.3個のサブスクサービスに契約しており、月額3,000円未満が75%を占めています。

注意したいのは、これらの契約が自動更新され続けることです。故人名義の口座やクレジットカードから毎月引き落とされ、数か月で5万円以上になるケースも珍しくありません。

意外かもしれませんが、「まさかうちの親がサブスクなんて」と思っていた方ほど、発見が遅れる傾向があります。

Netflix、Amazon Prime、新聞の電子版、ウイルス対策ソフト。高齢の親御さんでも、複数のサービスを使っていることは珍しくありません。

発見の近道は、クレジットカード明細で「毎月同じ金額の引き落とし」を探すこと。1か月分だけでも確認しておくと、いざというとき慌てずに済みます。

ネット銀行の把握漏れリスク

ネット銀行とは、店舗を持たずインターネット上でのみ取引できる銀行のこと。楽天銀行、住信SBIネット銀行、PayPay銀行などが代表例です。通帳やキャッシュカードを発行しないことが多いため、家族が存在を知らないまま放置されがちです。

同じくナイル株式会社の調査では、実は、65歳以上の35%がオンライン金融サービスを利用している報告があります。

「父がネット銀行を使っていたなんて知らなかった」というケースは珍しくありません。しかも、通帳がないため残高の確認もできず、相続手続きが大幅に遅れることがあります。

発見のヒントは、故人のメール受信箱で「口座開設」「ご利用明細」といった件名を検索すること。確定申告の書類に記載があることも。

「どの銀行を使っているか」だけでも家族で共有しておくと、いざというときの助けになります。


親のスマホにログインできないときの対処法

パスワードがわからなくても、あきらめる必要はありません。AppleやGoogleには、家族がアクセスするための正規ルートが用意されています。

無理に開けようとするとデータが消えてしまうリスクがあるため、まずは正しい手順を確認しましょう。

パスコードとパスワードの違い 「パスコード」はスマホのロック画面を解除する4〜6桁の数字のこと。「パスワード」はApple IDやGoogleアカウントにログインするための文字列です。どちらも必要になる場面があるため、両方を確認しておくと安心です。

iPhoneの場合

iPhoneには「故人アカウント管理連絡先」という機能があります。iOS 15.2以降で利用でき、万が一のときに備えて「この人には私のデータを見せてもいい」と事前に指定しておける仕組みです。

生前に設定されていれば、指定された家族がiCloud(アイクラウド)上の写真やメモにアクセスできます。

iCloud(アイクラウド)とは Appleが提供するインターネット上の保管場所です。iPhoneで撮った写真、連絡先、メモなどが自動的に保存されます。スマホ本体が壊れても、iCloudにデータが残っていれば復元できます。

故人アカウント管理連絡先が設定されていない

Appleに直接申請する方法があります。死亡証明書と相続関係を証明する書類(戸籍謄本など)を提出し、審査を経てiCloudデータへのアクセス権を申請できます。

ただし、スマホ本体のロック解除(パスコード解除)はAppleでも対応できません。パスコードを10回間違えると、「データを消去」設定がONの場合はデータが自動消去されてしまいます。5回目から段階的にロックがかかるため、「たぶんこれだろう」と何度も試すのは絶対に避けてください。

まずは手帳やデスク周り、スマホケースの内側などを探して、パスコードを書いたメモがないか確認することが先決です。

Androidの場合

Androidには「無通信アカウント管理ツール」という機能があります。一定期間(3か月〜18か月)アカウントが使われなかった場合に、指定した相手にデータを共有できる仕組みです。

生前に設定しておけば、指定された家族がGoogleフォトの写真やGmailのデータにアクセスできるようになります。

Googleフォトとは Googleが提供するインターネット上の写真保管場所です。Androidスマホで撮った写真が自動的に保存されます。スマホ本体が壊れても、Googleフォトにデータが残っていれば復元できます。

設定は5分で完了します。

  1. Googleアカウントにログイン →「Googleアカウントを管理」をタップ
  2. 「データとプライバシー」→「無通信アカウント管理ツール」を選択
  3. 無通信期間(3か月〜18か月)を設定
  4. 信頼できる連絡先を追加(最大10人まで指定可能)
  5. 共有するデータの範囲を選択(Googleフォト、Gmail、ドライブなど)

設定した期間アカウントが使われないと、指定した連絡先に通知が届き、選択したデータにアクセスできるようになります。

無通信アカウント管理ツールが設定されていない

Googleに直接申請する方法があります。故人のアカウントに対して、死亡証明書などの書類を提出し、データへのアクセスや削除を申請できます。

ただし、審査には時間がかかり、すべてのデータにアクセスできるとは限りません。また、スマホ本体のロック解除(画面ロック)はGoogleでも対応できないため、端末のパスコードがわからない場合は専門業者への相談が選択肢になります。

【おすすめ】専門業者に相談する

自分たちで解決するのが難しいときは、デジタル遺品整理の専門業者に相談する方法もあります。

ひとつ、知っておいていただきたいことがあります。パスワードを無断で推測してアクセスすることは、「不正アクセス禁止法」という法律に抵触する可能性があるのです。違反した場合、1年以下の懲役または50万円以下の罰金が定められています。

「家族なんだから、パスワードを推測して開けても問題ないでしょ?」と思われるかもしれません。でも、法律上はそうではありません。

善意で故人のスマホを開けようとした家族が、法的なトラブルに巻き込まれそうになったケースも耳にします。だからこそ、Apple・Google・Microsoftが用意している正規ルートを使うことが大切なのです。

専門業者は法律の範囲内で対応してくれるため、安心して相談できます。

親のパソコンにログインできないときの対処法

パソコンには、スマホよりも多くの書類や写真が眠っていることがあります。WindowsやMacには、万が一のときに家族がアクセスできる「回復の仕組み」が備わっています。

焦らず、公式の手順から試してみましょう。

Windowsの場合

Windows PCにログインできない場合、Microsoftアカウントに紐づいたデータへのアクセス申請が可能です。

申請に必要なもの

  • 故人の死亡証明書
  • 相続関係を証明する書類(戸籍謄本など)
  • 申請者の身分証明書

Microsoft公式サイトの「近親者の遺族からの開示申請」ページから手続きを行います。審査後、OneDrive(クラウド保存データ)やOutlookメールへのアクセス権が付与される場合があります。

ただし、PC本体のローカルアカウント(Microsoftアカウントと紐づいていないアカウント)のパスワード解除はMicrosoftでも対応できません。その場合は、専門業者によるデータ復旧が選択肢になります。

Macの場合

Macの場合も、iPhoneと同様に「故人アカウント管理連絡先」が設定されていれば、iCloudに保存されたデータにアクセスできます。

故人アカウント管理連絡先が設定されていない場合

Appleに直接申請する方法があります。死亡証明書と戸籍謄本を提出し、審査を経てiCloudデータへのアクセス権を申請できます。

Mac本体のログインパスワードがわからない場合、「macOSの復旧モード」を使ってパスワードをリセットできる場合があります。ただし、FileVault(暗号化機能)が有効になっている場合は、復旧キーがないとデータにアクセスできません。

周辺メモの探し方

PCの周りや引き出しの中に、小さなメモが隠れていることは意外と多いものです。

探してみる場所の例として、手帳の最後のページ、デスクマットの下、スマホケースの内側、財布の中などがあります。

見つからない場合でも、専門業者によるデータ復旧という選択肢があります。

デジタル遺品整理の業者選びと費用の目安

デジタル遺品整理をプロにお願いするときは、技術力だけでなく「家族の気持ちを理解してくれるか」も大切なポイントです。

業者を選ぶときのポイントは4つあります。

  1. 実績確認:年間対応件数、デジタル遺品整理士資格の有無
  2. セキュリティ対策:プライバシーマーク(個人情報保護の認証マーク)取得、守秘義務の明記
  3. 料金透明性:見積もりに作業内容の詳細が記載されている
  4. 対応力:問い合わせ時の丁寧さ、複数のサービスを組み合わせられるか

そして、費用の目安も確認しておきましょう。

サポート内容具体的なサービス費用相場(税込目安)
基本調査契約中のサービス一覧作成、解約サポート3万円〜
スマホ解除写真取り出し、パスコード解析5万円〜
PCデータ復旧故障したPCからのデータ抽出5万円〜

基本的には、最低3社から見積もりを取ることをおすすめします。「遺品整理士認定協会」や「デジタル遺品整理協会」の公式サイトから、認定業者を探すのがひとつの方法です。

信頼できる業者に共通しているのは、「最初の問い合わせ時に、できることとできないことを正直に説明してくれる」ことです。

「必ずデータを取り出せます」と断言する業者よりも、「状況を見てみないとわかりません」と言ってくれる業者のほうが、結果的に誠実な対応をしてくれることが多いです。

デジタル遺品には個人情報や金融情報が集中しているため、情報漏洩リスクへの対策がしっかりしている業者を選んでください。

親子で始める生前整理のコツ

一番いいのは、親御さんが元気なうちに「これ、あとで困らないように教えてね」と、笑顔で話し合える環境を作ることです。

デジタル化が進んだ今だからこそ、情報の共有が大切になってきています。

親子の対話から始める

まずはスマホのバックアップを一緒にやりながら、どんなアプリを使っているか聞いてみるだけでも十分です。

「LINEの使い方を教えて」と聞くと、親御さんも話しやすくなります。そのついでに「パスワードってどこかにメモしてる?」と聞けば、自然な流れでデジタル整理の話ができます。

うまくいくのは、「教えてもらう」というスタンスで話を切り出すこと。こちらが「教える」のではなく、「教えてもらう」。その姿勢で向き合いましょう。

パスワードを紙に残す習慣

スマホやPCを開ける「たった1つの鍵」だけを紙に書き、秘密の場所にしまっておくようお願いしてみてください。

名刺サイズの紙に書いて、修正テープで隠しておくのもひとつの工夫です。

また、終活用のエンディングノートとは別に「デジタル専用メモ」を1枚だけ作る方法があります。書くのは3つだけ。

  • スマホのパスコード(ロック画面を解除する4〜6桁の数字)
  • Apple IDまたはGoogleアカウントのパスワード(iCloudやGoogleのサービスにログインするためのもの)
  • よく使うネット銀行のログイン情報

すべてを書く必要はありません。この3つがあれば、家族は最低限のことができます。たった3つ、5分で書けます。


デジタル遺品整理に関するよくある質問

デジタル遺品整理について、よく寄せられる質問をまとめました。

Q1. スマホのパスワードがわからない。キャリアショップで教えてもらえますか?

いいえ、ショップでパスワードを教えてもらうことはできません。ただし、故人契約の解約手続きなど、家族としてのサポートは受けられます。NTTドコモの場合は手数料なしで解約が可能です。

Q2. 壊れたパソコンも買取してもらえますか?

はい、動かなくなったパソコンでも、専門の買取サービスなら無料で引き取りや買取をしてくれる場合があります。データ消去サービスが含まれているか、事前に確認しておくと安心です。

Q3. パスコードを10回間違えるとどうなりますか?

iPhoneで「データを消去」設定がONになっている場合、10回目の入力ミスでデータが自動消去されます。5回目から段階的にロックがかかるため、不用意な操作は避け、まずは周辺にメモがないか探してみてください。

Q4. サブスクの契約を見つける方法は?

クレジットカードの明細を確認するのが一番確実です。毎月同じ金額が引き落とされていれば、サブスク契約の可能性があります。カード会社に問い合わせると、引き落とし先を教えてもらえることもあります。

まとめ:デジタル遺品整理、今日から始める3つのこと

デジタル遺品整理は、大切な方の記録を整え、残された家族が前を向くための準備です。

パスワードひとつで、家族旅行の写真も、孫の成長記録も、届かなくなってしまうかもしれない。だからこそ、元気なうちに備えておくことが大切です。

今日からできることを3つだけ、挙げておきます。

  1. 自分のスマホで「故人アカウント管理連絡先」を設定してみる
  2. 親に「パスワードってどこかにメモしてる?」と聞いてみる
  3. クレジットカード明細で、毎月同じ金額の引き落としがないか確認する

つらい気持ちが続くときや、手続きで迷うことがあれば、デジタル遺品整理の専門家や終活アドバイザーに相談してみるのもおすすめです。ひとりで抱え込まず、頼れる人の力を借りてみてください。

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この記事を書いた人

藤原まどかのアバター 藤原まどか ライター

全国紙の社会部記者として10年以上にわたり、介護・相続・高齢者福祉を専門に取材。退職後は終活ジャンルに特化したライターとして活動し、終活ガイド1級、AFP(ファイナンシャルプランナー)、終活カウンセラー初級の資格を取得。両親の終活を実践中で、自らの経験をもとに「家族の立場から見た終活」を伝えています。制度の正確な情報と生活者視点の両立を大切に、わかりやすく丁寧な情報発信を心がけています。

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