親が亡くなったとき銀行口座はどうなる?凍結の仕組みと仮払い制度の使い方

親が亡くなったとき、「銀行口座がすぐ凍結される」「葬儀費用が引き出せなくなる」という話を聞いて焦った経験はないでしょうか。「凍結の仕組み」を知っているだけで、多くの不安は解消されます。この記事では、口座凍結の仕組みから必要書類の一覧、そして凍結後でも使える「仮払い制度」まで、ポイントを絞って解説します。

この記事でわかること

  • 銀行口座が凍結される仕組みと理由
  • 凍結前にやっておくべきこと
  • 死亡後の銀行手続きの基本的な流れ
  • 必要書類の一覧
  • 凍結後でも一部引き出せる「仮払い制度」
  • 手続き完了までの目安期間
目次

銀行口座は「すぐ凍結」される?

銀行口座は「死亡した瞬間に自動的に凍結される」わけではありません。銀行が口座名義人の死亡を知った時点で、その口座は凍結(取引停止)されます。

1
死亡届で口座凍結
銀行に連絡で即凍結
2
必要書類を収集
戸籍謄本・遺産分割協議書等
3
窓口で相続手続き
全相続人の押印が必要
4
解約・払い戻し
手続き完了は数週間〜

銀行が死亡を知るタイミングは主に以下の通りです。

  • 遺族から銀行に連絡した場合
  • 新聞の死亡広告・訃報を銀行が確認した場合
  • 口座に関する手続きで死亡が判明した場合

逆に言えば、家族がすぐに銀行へ連絡しなければ、しばらく凍結されないケースもあります。ただし、遺産分割が確定する前に遺産を引き出すことは、後のトラブルにつながる可能性がありますので、注意が必要です。

口座凍結の仕組みと理由

なぜ凍結されるのか

銀行口座が凍結されるのは、相続人全員を保護するためです。

故人の預金は「相続財産」の一部であり、法定相続人全員の共有財産となります。誰かが勝手に引き出してしまうと、他の相続人の権利が侵害される恐れがあります。そのため、銀行は死亡を確認した時点で、遺産分割が確定するまで口座の入出金を停止します。

口座凍結は「罰則」や「問題があったから」行われるわけではありません。相続人全員の利益を守るための正当な手続きです。

凍結後にできなくなること

  • 預金の引き出し・振込
  • 公共料金・家賃などの自動引き落とし
  • 年金などの振込入金(継続されることがありますが、後に返還が必要になります)

凍結前にやっておくべきこと

死亡直後は、まだ銀行が凍結していない場合もあります。この段階で確認・対応しておくべき点を整理します。

1. 口座の存在と残高を把握する

通帳・キャッシュカード・銀行からの郵便物を確認し、どの銀行に口座があるかをリストアップしておきましょう。

2. 引き落とし先を確認する

公共料金・クレジットカード・保険料など、故人の口座から自動引き落としされているものを把握します。凍結後は引き落としができなくなるため、名義変更や引き落とし先の変更が必要になります。

3. 相続人全員に状況を共有する

遺産分割が確定する前に遺族の一人が独断で引き出すと、後の遺産分割トラブルの原因になります。必ず相続人間で情報を共有した上で手続きを進めましょう。

故人の口座から無断で多額の預金を引き出すことは、他の相続人から法的に問題を指摘される可能性があります。急いで動く前に、相続人全員に連絡を取ることを強くおすすめします。

死亡後の銀行手続きの流れ

銀行への手続きは概ね以下のステップで進みます。なお、銀行によって細かい手順や必要書類が異なる場合があるため、必ず対象の銀行に確認してください。

ステップ1:銀行への死亡の連絡

まず、故人が口座を持っていた銀行の窓口または電話で、死亡した旨を連絡します。この時点から口座が凍結されます。

ステップ2:相続手続き書類の請求

銀行に「相続手続き書類一式」を請求します。銀行によって書式が異なりますが、多くの場合「相続届」や「払戻請求書」などの書類が郵送または窓口で交付されます。

ステップ3:必要書類の収集

相続人の確定と書類の収集が必要です(後述の一覧を参照)。

ステップ4:書類の提出と審査

書類を窓口に提出します。銀行の審査後、遺産分割協議書の内容に従って口座の解約・払戻・名義変更などが行われます。

ステップ5:払戻または口座解約

審査が通ると、相続人の指定口座への振込または窓口での払戻が完了します。

必要書類一覧

相続手続きに必要な書類は、遺言書の有無や相続人の構成によって異なります。以下は一般的な目安です。

書類 入手先 備考
故人の除籍謄本・戸籍謄本(出生〜死亡まで) 市区町村役場 相続人を確定するために必要
相続人全員の戸籍謄本 市区町村役場 各相続人のもの
相続人全員の印鑑証明書 市区町村役場 有効期限に注意
遺産分割協議書(相続人全員の署名・実印) 相続人間で作成 遺言書がある場合は不要なことも
遺言書(ある場合) 自宅や公証役場 公正証書遺言は公証役場で確認
銀行所定の相続手続き書類 各銀行窓口 銀行によって書式が異なる
通帳・キャッシュカード 手元にあるもの 紛失していても手続き可能

法改正により、相続登記(不動産の名義変更)は義務化されています。不動産を含む相続については、司法書士への相談をおすすめします。

仮払い制度とは

民法第909条の2(2019年7月施行)により、遺産分割が確定する前でも、一定額まで預金を引き出せる「仮払い制度」が設けられています。

仮払い制度の仕組み

相続人が単独で(他の相続人の同意なく)、以下の上限まで預金を引き出すことができます。

  • 上限額:各相続人について、「口座残高 × 1/3 × 法定相続分」か、150万円のいずれか少ない方(金融機関ごとの上限)
  • 用途:葬儀費用・当面の生活費など

計算例: 預金残高が900万円、相続人が子2人(法定相続分1/2ずつ)の場合 → 900万円 × 1/3 × 1/2 = 150万円まで引き出し可能(1つの金融機関あたりの上限額)

利用方法

銀行窓口に申し出ることで手続きできます。戸籍謄本などの書類提示が必要になります。

仮払い制度は、葬儀費用や当面の生活費に対応するための制度です。引き出した金額は後の遺産分割協議で考慮されますので、引き出した事実と金額を記録しておきましょう。

手続き完了までの期間の目安

フェーズ 目安期間
書類収集(戸籍謄本等) 1〜4週間
遺産分割協議 相続人間の状況による(数週間〜数年)
銀行の審査・払戻 書類提出後おおむね数週間〜2か月程度(銀行・内容により異なる)
全体の目安 早くて2〜3か月、相続人間でもめると1年以上

相続税の申告が必要な場合は、死亡を知った日の翌日から10か月以内が申告期限とされています(相続税法第27条)。相続財産の規模が大きい場合は、早めに税理士へ相談することをおすすめします。

よくある質問(FAQ)

Q1. 親が亡くなった直後、葬儀費用のために口座からお金を引き出しても問題ありませんか?

銀行が死亡を把握していなければ引き出し自体はできる場合もありますが、後の遺産分割でトラブルになる可能性があります。「仮払い制度」を利用して正式な手続きで引き出すか、葬儀社に対してはいったん立替払いをして後から精算する方法が一般的です。

Q2. 銀行が複数ある場合、すべての銀行で別々に手続きが必要ですか?

はい、原則として各銀行ごとに手続きが必要です。ただし、一部の銀行では「法定相続情報証明制度」を利用することで、戸籍謄本の原本を各金融機関に何度も提出する手間を省くことができます。この制度は法務局で手続きできます。

Q3. 亡くなった親が口座を持っていた銀行がわからない場合はどうすればよいですか?

通帳・キャッシュカード・銀行からの郵便物・確定申告書の利子所得欄などを手がかりに探しましょう。また、故人が利用していた可能性のある銀行に直接問い合わせて確認することも可能です。なお、名義人死亡後に放置された預金は「休眠預金」となり、最終的に民間公益活動の財源に活用される仕組みが設けられています。早めに確認・手続きを進めましょう。

専門家への相談をおすすめします

銀行口座の相続手続きは、戸籍収集・遺産分割協議・各銀行への個別対応など、思った以上に手間がかかる場合があります。

司法書士・弁護士へのご相談をおすすめします。

各都道府県の司法書士会や弁護士会では、相続に関する無料相談窓口を設けているところがあります。また、法定相続情報証明制度の活用についても専門家に相談することで、手続き全体をスムーズに進めることができます。本記事の内容は一般的な情報であり、個別の状況に応じたアドバイスは専門家にご確認ください。

参考資料

相続・銀行手続きの無料相談

口座凍結から相続完了まで、弁護士法人グループの専門家がサポートします。

免責事項:本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の法的助言を行うものではありません。具体的な手続きや判断については、弁護士・行政書士・司法書士等の専門家にご相談ください。掲載情報は2026年3月時点のものであり、法改正等により変更となる場合があります。
監修・執筆:井上剛志
行政書士/終活カウンセラー上級/成年後見制度アドバイザー/宅地建物取引士
相続・不動産・終活分野の手続きを専門とする行政書士。おくりびとジャーナルにて制度・法律・費用に関する記事を執筆。

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    この記事を書いた人

    井上剛志のアバター 井上剛志 行政書士・終活カウンセラー上級

    行政書士として相続・遺言・成年後見などの実務に従事し、終活分野の相談を多数対応。終活カウンセラー上級、成年後見制度アドバイザー、宅地建物取引士の資格を活かし、法的リスクへの備えや不動産整理まで総合的にカバーしています。親の介護と相続を経験したことから、実務知識と当事者視点をあわせた情報提供を重視。読者にとって「すぐに使える終活知識」をモットーに、わかりやすく丁寧な解説を行います。

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