任意後見制度の費用はいくら?【公正証書・登記・専門家報酬の全額一覧】

「任意後見、検討したいけど高そう」——その感覚は正しいです。長期になると総額が数百万円規模になるケースもある。でも知らずに放置して認知症が進んだ場合、自分で後見人を選ぶ権利そのものが失われます。費用の全体像を知ったうえで、「やる・やらない」を判断してください。

この記事でわかること

  • 任意後見制度とは何か(法定後見との違い)
  • 任意後見の流れ(契約→公正証書→申立→監督)
  • 発生する費用の種類と目安
  • 費用の一覧表(公証人・登記・専門家・監督人)
  • 任意後見制度が向いている人の特徴
目次

任意後見制度とは?法定後見との違い

後見制度には大きく分けて「法定後見」と「任意後見」の2種類があります。

1
後見人を選ぶ
信頼できる人・法人を選定
2
公正証書で契約
公証人役場で作成
3
法務局に登記
登記完了で制度が有効に
4
効力が発生
判断能力低下時に監督人が申立

法定後見制度

すでに判断能力が低下した人を対象に、家庭裁判所が後見人を選任する制度です。後見人を自分で選ぶことはできません。

任意後見制度

判断能力があるうちに、自分で後見人となる人(任意後見受任者)と支援内容を決めて契約しておく制度です。将来、判断能力が低下した際に家庭裁判所に申し立てを行い、正式に後見がスタートします。

比較項目 法定後見 任意後見
利用タイミング 判断能力低下後 判断能力があるうちに
後見人の選定 家庭裁判所が決定 自分で選ぶ
支援内容の自由度 裁判所の判断に依存 契約で自由に設定可
家庭裁判所の関与 開始時から 申立後から

任意後見の最大のメリットは、「誰に・何を・どこまで」任せるかを自分の意思で決められる点にあります。

任意後見の流れ

任意後見制度は、以下の4つのステップで進みます。

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ステップ1:任意後見契約を結ぶ

本人(委任者)と任意後見受任者(将来後見人になる人)が、どんな支援を行うかを決めた契約書を作成します。

支援内容の例: – 預貯金の管理・引き出し – 介護サービスや施設入所の契約 – 医療費の支払い – 不動産の管理(売却は原則として別途対応が必要)

ステップ2:公正証書を作成する

任意後見契約は、必ず公証役場で公正証書として作成しなければなりません。これは法律で定められた要件であり、私文書では効力が生じません。

公正証書作成と同時に、法務局に登記がなされます(後見登記)。

ステップ3:家庭裁判所へ申立てを行う

本人の判断能力が低下した段階で、任意後見受任者・本人・本人の四親等内の親族などが家庭裁判所に申立てを行います。

ステップ4:任意後見監督人が選任され、後見開始

家庭裁判所が任意後見監督人(司法書士・弁護士など)を選任し、正式に任意後見がスタートします。監督人は後見人の業務が適正に行われているかをチェックします。

任意後見は「契約だけして終わり」ではありません。実際に後見が始まるまでの間、本人の状態を見守る「見守り契約」や、財産管理を事前に委任する「財産管理委任契約」をあわせて結ぶケースも多くあります。親世代がまだ元気なうちに、子世代が制度を調べて一緒に検討するのが、後悔しない準備の仕方です。

費用の全体像

任意後見制度を利用すると、いくつかの場面で費用が発生します。大きく分けると「契約時の費用」と「後見開始後の継続費用」があります。

費用の目安一覧表

費用の種類 支払先 金額の目安
公証人手数料 公証役場 1万1,000円〜(契約内容により加算)
登記嘱託手数料 公証役場(法務局へ) 1,400円
収入印紙・切手代 公証役場 数千円程度
戸籍謄本などの取得費用 市区町村窓口 数百〜数千円
専門家への依頼費用(契約書作成) 司法書士・弁護士事務所 5万〜15万円程度(事務所により異なる)
家庭裁判所への申立費用 家庭裁判所 800円程度(収入印紙)
任意後見監督人報酬(月額) 監督人(司法書士・弁護士等) 月1万〜3万円程度(家庭裁判所が決定)

各費用の詳細

公証人手数料 公正証書の作成にかかる費用で、契約内容に応じて計算されます。任意後見契約の場合は1万1,000円が基本ですが、財産管理委任契約などを同時に作成する場合は加算されます。

専門家への依頼費用 任意後見契約書の内容設計・作成を司法書士や弁護士に依頼した場合の費用です。事務所によって異なりますが、5万〜15万円が目安とされています(事前に複数の事務所へ見積もりを取ることをおすすめします)。自分で内容を決めて公証役場に持ち込む方法もありますが、専門家のサポートを受けることで、後から「支援内容が足りなかった」というトラブルを防げます。

任意後見監督人の報酬 後見が始まった後、毎月継続的に発生するのが監督人報酬です。管理する財産の規模や業務量によって家庭裁判所が金額を決定します。月1万〜3万円が目安とされていますが、これは家庭裁判所の判断によるため、あらかじめ確定させることはできません。長期にわたる後見では、監督人報酬の総額が最も大きなコストになる場合があります。

費用のシミュレーション(参考例)

たとえば、司法書士に依頼して任意後見契約を結び、10年間後見が続いた場合の概算は以下の通りです。

  • 契約時の諸費用(専門家費用込み):約15〜20万円
  • 監督人報酬(月2万円×12ヶ月×10年):約240万円
  • 合計目安:約255〜260万円

※監督人報酬は家庭裁判所が決定するため、月2万円は参考値です。財産規模・業務量により月1万〜3万円の範囲で変動します。

この費用をどう捉えるかは人それぞれです。費用と得られる安心のバランスを、家族とともに検討することをおすすめします。

任意後見制度が向いている人

以下のような状況や希望がある方は、任意後見制度を検討する価値があります。

  • 家族に財産管理を任せることに不安がある(家族間のトラブルを防ぎたい)
  • 信頼できる友人・知人・専門家を後見人にしたい(子どもがいない・遠方など)
  • 認知症になった後の医療・介護の希望を具体的に決めておきたい
  • 一人暮らしで将来の生活管理に不安がある
  • 財産がある程度あり、適切に管理・継承したい

任意後見制度は万能ではありません。後見人ができることは「財産管理」と「身上監護(介護・医療に関する契約手続きなど)」です。本人の代わりに手術に同意する「医療同意権」は後見人にはなく、相続税対策などの積極的な財産運用も基本的には後見人の権限の外にあります。制度の対象範囲を正確に理解したうえで利用を検討してください。

専門家への相談をおすすめします

任意後見契約の内容設計・公正証書の作成・家庭裁判所への申立ては、専門的な法律知識が必要な手続きです。

司法書士・弁護士へのご相談をおすすめします。

各都道府県の司法書士会や弁護士会では、無料相談窓口を設けているところも多くあります。また、市区町村の「成年後見相談窓口」でも初期の情報提供を受けられます。本記事の内容は一般的な情報であり、個別の状況に応じたアドバイスは専門家にご確認ください。

FAQ

Q1. 任意後見の後見人は、家族以外でも選べますか?

はい、選べます。信頼できる友人・知人のほか、司法書士や弁護士などの専門家を後見人にすることも可能です。子どもがいない方や、家族関係に不安がある方は、専門家への依頼も選択肢の一つです。なお、後見が始まった後は家庭裁判所が選任する監督人が別途つくため、後見人の独断専行を防止する仕組みが備わっています。

Q2. 任意後見契約を結んだ後、内容を変更・解除することはできますか?

判断能力があるうちであれば、契約の変更・解除は可能です。変更の場合は再度公正証書を作成する必要があります。一方、後見が開始(任意後見監督人が選任)された後は、家庭裁判所の許可なく解除することはできません。

Q3. 法定後見と任意後見、どちらを選べばいいですか?

判断能力がある今の段階で検討しているなら、自分で後見人・支援内容を選べる任意後見制度を先に検討することをおすすめします。すでに判断能力が低下している場合は法定後見しか選べません。どちらが適切かは個々の状況によって異なるため、司法書士・弁護士に相談したうえで判断してください。

まとめ

任意後見制度は、「将来の自分を、自分で守る」ための大切な制度です。費用は契約時の初期費用と、後見開始後に毎月発生する監督人報酬の2段構えで発生します。長期間利用すると総額が大きくなる点も踏まえて、早めに検討・準備することが重要です。具体的な手続きは司法書士や弁護士など専門家へのご相談をおすすめします。

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    この記事を書いた人

    井上剛志のアバター 井上剛志 行政書士・終活カウンセラー上級

    行政書士として相続・遺言・成年後見などの実務に従事し、終活分野の相談を多数対応。終活カウンセラー上級、成年後見制度アドバイザー、宅地建物取引士の資格を活かし、法的リスクへの備えや不動産整理まで総合的にカバーしています。親の介護と相続を経験したことから、実務知識と当事者視点をあわせた情報提供を重視。読者にとって「すぐに使える終活知識」をモットーに、わかりやすく丁寧な解説を行います。

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