親の終活がつらいと感じたら|心の整理と無理なく進めるヒント

親の体調の変化や、ふとした瞬間に老いを感じたとき、「終活について話し合わなければ」と思いつつも、なかなか一歩を踏み出せずにいる方は多いのではないでしょうか。

つらいと感じるのは当然のことです。感情面と実務面の負担が同時に押し寄せるからこそ、心が疲弊してしまいます。

この記事では、心の整理の仕方から、親に話を切り出すコツ、確認しておきたい項目まで、無理なく進めるためのヒントをまとめました。

目次

親の終活がつらいと感じるのは当然のこと

親の終活と向き合うとき、心がざわつくのは自然な反応です。

「考えたくない、でも考えなければ」という葛藤を抱えている方は、決して少数派ではありません。

親の老いを実感する瞬間は誰にでもある

ふとした瞬間に、親の老いを感じることがあるかもしれません。

階段を上る足取りが遅くなった、同じ話を繰り返すようになった。そうした小さな変化が、終活を意識するきっかけになることは珍しくないでしょう。

NTTファイナンスが実施した調査によれば、親世代の76%が子どもと終活について話し合いたいと考えています

一方で、実際に話し合っているのはわずか23%にとどまります。親子双方が「いつか話さなければ」と思いながら、なかなか一歩を踏み出せない現実が浮かび上がっています。

感情と実務が同時に押し寄せる重さ

親の終活がつらいのは、感情面と実務面の負担が同時にやってくるからです。

「親がいなくなる」という現実を受け止めながら、葬儀やお墓、相続といった具体的な準備も考えなければならない。この二重の重さが、心を疲弊させてしまいます。

グリーフケア(悲嘆のケア)の専門家によれば、大切な人との別れを予感するだけでも、眠れない、集中できないといった心身の反応が現れることがあるとされています。つらさを感じるのは、心が正常に働いている証拠ともいえるでしょう。

「まだ早い」と思いたい気持ちも大切にする

「まだ元気だから」「縁起でもない」と思いたい気持ちがあっても、無理に否定する必要はありません。

ただ、終活は「死ぬ準備」ではなく、「安心して生きるための準備」です。親が元気なうちだからこそ、本人の希望を直接聞ける時間があります。

認知症などで判断能力が低下してからでは、意思確認そのものが難しくなってしまいます。

焦る必要はありませんが、「元気な今だからできること」があるのも事実です。「考えてみようかな」と思えたタイミングを、大切にしてみてください。

親の終活がつらくなる3つの理由

なぜこれほどつらいのか。その理由を言葉にしてみると、少し気持ちが整理されることがあります。

ここでは、多くの方が感じるつらさの背景を3つに分けて見ていきましょう。

親との別れを意識してしまうから

終活を考えることは、親との別れを意識することでもあります。

「いつかは」とわかっていても、具体的に向き合おうとすると心が追いつかない。その感覚は、誰にでも起こり得るものです。

親を大切に思う気持ちが強いほど、別れを想像することへの抵抗も大きくなります。

つらいと感じるのは、それだけ深い愛情があるからだと考えてみてください。

一人で責任を背負っている気がするから

「自分がやらなければ」というプレッシャーが、つらさを増幅させていることもあります。

特に一人っ子の方や、実家に近い立場の方は、終活の中心を担う意識が強くなりがちです。兄弟姉妹がいても、それぞれの事情で協力が得られないケースも少なくありません。

一人で抱え込む必要はありません。後述する相談先を活用しながら、負担を分散させていくことが大切です。

話を切り出せないまま時間が過ぎるから

「話したいけれど、どう切り出せばいいかわからない」という悩みは非常に多く聞かれます。

調査データでも、親子双方が終活の話し合いを望んでいるにもかかわらず、実際に話し合えているのは2割程度にとどまっています。

切り出せないまま時間が過ぎることで、焦りや罪悪感が募り、さらにつらさが増していく。そんな悪循環に陥っている方もいるでしょう。

しかし、親が元気なうちに話し合えなかった場合、いざというときに「何も聞いていない」状態で判断を迫られることになります。その負担は、今感じているつらさよりも大きくなる可能性があります。

つらさを抱えたまま進めるための心の守り方

つらさが消えないまま終活を進めなければならないこともあります。

そんなときは、自分の心を守りながら、少しずつ前に進む方法を意識してみてください。

「全部やる」をやめて優先順位を決める

完璧を目指す必要はありません。

終活で確認すべき項目は多岐にわたりますが、すべてを一度に片付けようとすると、心が疲弊してしまいます。

まずは「医療・介護の希望」「お金の概要」など、優先度の高いものから始めるのがおすすめです。

特に医療・介護の希望は、親が判断能力を失った後では確認できません。延命治療の方針や介護の場所など、本人にしか決められないことを先に聞いておくと、後々の負担が大きく軽減されます。

「できることから、少しずつ」。その積み重ねが、やがて大きな安心につながります。

親を尊重しつつ自分の気持ちも大切にする

親の希望を聞くことは大切ですが、自分の気持ちを押し殺す必要はありません。

「聞くのがつらい」と感じたら、無理をせず一度休むことも選択肢の一つです。

親を尊重することと、自分を大切にすることは、どちらも同じくらい重要だと考えてみてください。

ひとりで抱え込まず相談先を持つ

つらいときは、誰かに話を聞いてもらうだけでも気持ちが軽くなることがあります。

各市町村に設置されている「地域包括支援センター」は、65歳以上の親を持つ方であれば無料で相談できる窓口です。介護や終活に関する幅広い相談に対応しており、「何から始めればいいかわからない」という段階でも利用可能です。

また、グリーフケアを専門とする相談窓口や、心療内科のグリーフケア外来なども選択肢として覚えておくと安心でしょう。

親の終活で最低限確認しておきたいこと

「何から手をつければいいかわからない」という方のために、最低限押さえておきたい項目を整理しました。

すべてを一度に確認する必要はありません。できる範囲で、少しずつ進めていきましょう。

医療・介護の希望は早めに聞いておく

親が判断能力を保っている今のうちに、医療や介護に関する希望を確認しておくことが大切です。

具体的には、以下のような項目が挙げられます。

項目確認内容の例
介護の場所自宅・施設・サービス付き高齢者住宅など
介護の担い手家族中心か、専門サービス利用か
延命治療積極的な治療を望むか、緩和ケア中心か
病名・余命告知本人への告知を希望するか

親が認知症になった後では、本人の意思確認が難しくなります。

たとえば延命治療の判断を子どもだけで下すのは、精神的に非常に重い負担となります。「親はどうしてほしかったのか」がわからないまま決断を迫られる苦しさは、想像以上のものです。

「元気なうちに聞いておく」ことが、親のためだけでなく、将来の自分を守ることにもつながります

お金の「入口」だけ把握しておく

お金の話は切り出しにくいものですが、正確な金額を知る必要はありません。

「どの銀行に口座があるか」「保険に加入しているか」「年金はいくらくらいか」。入口の情報だけでも把握しておくと、いざというときの対応がぐっと楽になります。

親が亡くなった後、口座の存在すら知らなければ、相続手続きは非常に煩雑になります。

「通帳がどこにあるか」「どの保険会社と契約しているか」程度の情報でも、知っているのと知らないのとでは大きな差が生まれます。

「私も最近、老後のお金のことを考え始めて…」と自分の話から入ると、自然な流れで聞きやすくなります。

エンディングノートを一緒に見てみる

エンディングノートは、親の希望や気持ちを整理するためのツールです。

法的な効力はありませんが、葬儀の希望、連絡してほしい人、家族へのメッセージなど、遺言書には書きにくい内容を自由に記録できます。

書くべき項目は多岐にわたりますが、最初からすべて埋める必要はありません。

親と一緒にページをめくりながら、「ここは書けそう」という部分から始めてみるのも一つの方法です。

相続に関する法的に有効な希望を残したい場合は、別途遺言書の作成が必要になります。エンディングノートに「長男にすべて相続させる」と書いても、法的効力はありません

迷ったときは、司法書士や弁護士などの専門家に相談してみてください。

親に終活の話を切り出すコツ

「話を切り出すのが怖い」という声は非常に多く聞かれます。

ここでは、親を不快にさせにくい切り出し方のヒントを紹介します。

日常の話題から少しずつ広げる

いきなり「終活しよう」と切り出すのではなく、日常会話の延長線上で話題を広げていく方法がおすすめです。

たとえば、テレビのニュースで相続トラブルの話題が出たとき、「うちはどうしておこうか」と軽く振ってみる。

昔のアルバムを見ながら、「この写真、誰に残したい?」と聞いてみる。そうした小さなきっかけが、対話の入口になることがあります。

「困りたくない」から入ると伝わりやすい

親が「死」の話題を避けたがるのは、「縁起でもない」という感覚だけでなく、「子どもに迷惑をかけたくない」という気持ちの裏返しでもあります。

「お父さん(お母さん)が困らないように」ではなく、「私が困らないように教えてほしい」という伝え方を試してみてください。

「いざというとき、私が何もわからないと困るから」と伝えることで、親も「子どものために話しておこう」という気持ちになりやすくなります。

実際、親世代の多くは「子どもと話し合いたい」と思っているというデータもあります。きっかけさえあれば、話は進みやすいものです。

一度で全部聞こうとしない

一度の会話ですべてを確認しようとすると、親も身構えてしまいます。

「今日はお墓のことだけ」「次は保険のことを聞いてみよう」。短く区切り、回数を重ねることで、自然と情報が集まっていきます。

焦らず、時間をかけて進めていきましょう。話し合いのきっかけは、思いがけないタイミングで訪れることもあります。

よくある質問

最後に、よく寄せられる質問と回答をまとめました。

親が終活の話を嫌がる場合、どうすればいいですか?

無理に進めようとせず、親の気持ちをまず受け止めることが大切です。「最近、体の調子はどう?」といった日常会話から始め、少しずつ話題を広げていく方法がおすすめです。写真整理や昔話など、やわらかい入口から始めるのも一つの方法でしょう。

親の終活を一人で抱え込んでしまいます。どこに相談できますか?

各市町村に設置されている「地域包括支援センター」が、最も身近な相談先です。65歳以上の親を持つ方であれば、介護や終活に関する幅広い相談を無料で受けられます。「何から始めればいいかわからない」という段階でも利用可能です。

兄弟姉妹と意見が合わない場合、どうすればいいですか?

まずは親本人の希望を中心に据え、兄弟姉妹にも情報を共有することが大切です。不公平感や不信感を避けるため、話し合いの内容を記録しておくのもおすすめです。意見がまとまらない場合は、司法書士や終活アドバイザーなどの第三者に入ってもらう方法もあります。

親が認知症になった後でも終活の話し合いはできますか?

判断能力が低下すると、本人の意思確認は難しくなります。成年後見制度を活用する方法もありますが、親の希望を最も正確に反映できるのは、判断能力がある時期です。「遅すぎることはない」と捉え、親が元気な今から少しずつ始めてみてください。

エンディングノートと遺言書の違いは何ですか?

エンディングノートは法的効力がなく、形式も自由です。葬儀の希望や家族へのメッセージなど、気持ちを伝えるツールとして活用できます。一方、遺言書は法的効力を持ち、相続に関する希望を正式に残すことができます。相続について法的に有効な形で残したい場合は、別途遺言書の作成が必要です。

まとめ|小さな一歩が安心につながる

親の終活がつらいと感じるのは、親を大切に思っているからこそ生まれる自然な感情です。無理に気持ちを押し殺す必要はありません。

ただ、「いつかやろう」と先延ばしにし続けると、親が判断能力を失ってから後悔することになりかねません。

医療・介護の希望、お金の入口、エンディングノート。まずはできることから、少しずつ始めてみましょう

つらい気持ちが続くときは、地域包括支援センターやグリーフケアの専門家に相談するのもおすすめです。

一人で抱え込まず、周囲の力を借りながら、あなたのペースで進めていってください。

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この記事を書いた人

藤原まどかのアバター 藤原まどか ライター

全国紙の社会部記者として10年以上にわたり、介護・相続・高齢者福祉を専門に取材。退職後は終活ジャンルに特化したライターとして活動し、終活ガイド1級、AFP(ファイナンシャルプランナー)、終活カウンセラー初級の資格を取得。両親の終活を実践中で、自らの経験をもとに「家族の立場から見た終活」を伝えています。制度の正確な情報と生活者視点の両立を大切に、わかりやすく丁寧な情報発信を心がけています。

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